本文へ移動

身近な法律問題

権利の濫用の濫用

裁判官は、判決にするにあたり、「オールマイティーな切り札」をもっています。

 「権利の濫用は、これを許さない」という民法1条3項の条項です。

 平易にいえば「法的に評価して、権利を認められると判断された場合であっても、裁判所は、訴訟では権利の行使を認めません、よって権利を有する当事者の敗訴にします」ということです。

 私が裁判官の時は、一部、定型的なものをのぞき「権利の濫用」で結論を逆にするなどということは考えませんでした。
 和解では、できるだけ説得するのですが、和解が不成立になった場合は、判決の結論は、権利を有するものの勝訴です。

 弁護士になってから、一部定型的なものを除き、「権利の濫用」や、あとに述べます「信義則違反」などという主張をせざるをえない場合は、ほぼ100%和解ねらい、勝てるなどとは思っていません。


 しかし、弁護士になってみると「権利の濫用」の「濫用」をする裁判官が結構多いです。
 本来は、権利の濫用が裁判上認められるためには、権利を行使しようとするものが、悪質な故意を持っていたり、公序良俗違反(民法90条)に近いこと、信義則違反(民法1条2項)とあいまって、高度の反社会性が立証がなされるべきでしょう。
 「権利濫用」の「濫用」がなされたのでは、判決の予測がつきにくくなり、法律に従って行動している本人もそうですし、代理人である弁護士もたまったものではありません。


 もっとも、弁護士ですから、「権利濫用」の「濫用」でもうける場合もあります。
 事案は、相続税対策を理由に、父親に、大きな借金を背負わせて、自分が店舗として利用しながら、父親が死亡すると、父親の連帯保証人としての義務を履行したとして、母親や他の兄弟に求償をした事例でした。
 一緒に被告ら代理人をしていた弁護士さんの書いた準備書面がすばらしかったのか「権利の濫用」で請求棄却となりました。被告らが依頼者ですから完全勝訴です。
 もちろん敗訴は覚悟していたのですが、4億円の請求棄却は「丸儲け」でした。
 判決後、10分の1以下で示談したのですが、相手方弁護士さんの落胆の様子は気の毒なぐらいでした。

逆に、「権利濫用」の「濫用」で損する場合もあります。
 ある個人会社の元従業員(元愛人)からの貸金請求で、代表者の兄から元従業員(元愛人)にかなりの金がわたり、元従業員(元愛人)の貸金の原資は、ほとんど全部といってていいくらい代表者の兄からの貸金だったという事案で、兄から個人会社に債権譲渡をしてもらい、相殺の主張をしたのですが、相殺の主張は「権利の濫用」として敗訴してしまいました。
 もっとも、認容額は約400万円で、訴訟中に、依頼者自身が(私の指示ではありません)、会社を「もぬけの殻」にしていましたから、判決の実害はありませんでしたが、報酬はもらい損ねました

  裁判官は、「権利の濫用」がお好きですね。
 世間の耳目を集めている判決にも「権利濫用」の「濫用」ではないかという事案も散見されます。
 法律を守るだけでは不十分で、裁判官の機嫌を損ねないようにしなければならないでは、本当の意味の法治国家でしょうか。

 以上、単なる「感想」です。

西野法律事務所
〒530-0047
大阪府大阪市北区西天満2-6-8堂ビル407号
TEL.06-6314-9480
FAX.06-6363-6355
 
お気軽にご相談下さい

電話による法律相談は行って
おりません(土日祝日休)
9時~12時 1時~5時30分
TOPへ戻る