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身近な法律問題

裁判の勝ち負け

裁判官をしていたとき、民事訴訟の合議事件で、同じ記録をみて、同じ証人・本人の尋問を聞いているのに、結論が、全く正反対になったという経験があります。
ということは、それぞれの裁判官が、単独(1人)で判決を書けば、結論が全く逆の判決になるということになります。
 そして、結論が異なるということは、裁判官の一部が正しく、裁判官の一部が誤りという理屈になります。

 また、弁護士になってからですが、地方裁判所の一審判決と、高等裁判所の控訴審判決が逆になることが結構あります。
 新たな証拠でもでていれば別ですが、主張も証拠もほぼ同じで結論が逆ということは、一審判決と控訴審判決のどちらかが正しく、どちらかが誤りという理屈になります。

 「裁判官が常に正しい判決をする」という前提であれば、裁判官3人の合議は必要はなく、1人の裁判官が審理すれば十分ということになりますし、一審限りで十分、控訴審や上告審など上級審は必要がないということになります。
 つまり「裁判官が常に正しい判決をする」ことが前提ではなく、最初から「裁判官は間違った判決をすることがある」ということが前提となっているシステムです。

 弁護士の言訳かも知れませんが、裁判所の考え方一つによって、弁護士が勝つべきと考えている事件について適切な訴訟遂行しても敗訴する場合もありますし、弁護士が負けるべきと考えている事件について、なぜか勝訴してしまうことがあります。
 判決が確定した後、金銭のやりとりという最後の時点で、こちらや、相手方弁護士が、「正直いって、負ける確率の方が高いと思っていたんですが、なぜか勝っちゃいました。悪いですねぇ」と言うことは、結構あります。

 依頼者の方にとっては「たまった」ものではないでしょうが、弁護士からすると、裁判所の判断ミスはよくあることでお互い様ということになり、できれば、勝つべき事件を負けるのが小さな訴訟額の事件であり、負けるべき事件を勝つのが大きな訴訟額の事件であれば、事務所経営だけを考えると好都合ということになります。

 なお、弁護過誤訴訟というのもあるのですが、医療過誤訴訟とは本質的に異なります。
 医療過誤訴訟は、例えば「死亡した」という冷厳な結果がありますから、医師が、自分のミスではないということをいうためには、不可抗力である、すなわち「病気が重かった」「来院したとき既に手遅れだった」ということを主張・立証しなければ勝訴は難しいですが、弁護過誤訴訟は、神ならぬ裁判官が介在していますから、そのようなことを主張する必要もなく、自分が「やるべき仕事をちゃんとやった」と主張・立証するだけで足りることになります。
 もちろん、控訴期間の計算ミスで、控訴が却下されたなどということになれば、言訳しようも言訳できませんが、普通は、計算ミスがあることも考え、あるいは、弁護士が交通事故にあったり急病になったりする可能性も考えて、2、3日早めに控訴手続きをするものです。

西野法律事務所
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