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旅・交通 バックナンバー2/2

以遠権

 「以遠権」という言葉をご存じでしょうか。

 教科書的にいえば、「以遠権」とは、国際航空運輸において、自国から相手国を経由して、相手国からさらに先にある別の国への区間についても営業運行を行なう権利のことです。

 例えば、デトロイトから飛んできたノースウェスト機が関空に着き、ノースウェストが発券する航空券を購入してもらった乗客をのせ、関空から台北までのせて飛び立つことができれば、ノースウェスト航空は、デトロイト・関空間、デトロイト・台北間の客だけではなく、関空・台北間の客ものせることができるということになります。関空経由は、この便だけです。

 ノースウェスト航空は、ロサンゼルス・成田・香港、ポートランド・成田・シンガポール、シアトル・成田・ソウル、ホノルル・成田・広州、デトロイト・成田・北京と上海、サンフランシスコ・成田・バンコク、ミネアポリス・中部・マニラと一機の機体で、稼ぎまくっています。同じ機体ではありませんが、成田よりで釜山、サイパン、グァムと飛んでいます。

 もともと、第二次世界大戦後の昭和27年に締結された協定は、米国航空会社に無制限の以遠権を認めるなど不平等な内容であったため、改定の努力が続けられてきましたが、現在の日米航空協定でも、日本がアメリカを経由して飛べるところは一ヶ所なのに対し、アメリカから日本を経由してアジアの主要9都市(香港・シンガポール・ソウル・広州・北京・上海・バンコク・マニラ・台北)に飛べることになっていて、不公平なことから、日米間では見直しにからんで厳しい交渉が続いています。

 日本の航空会社にとっては完全に不利な内容となっているからです。

 ただ、アメリカの航空会社が持つ以遠権は、日本人旅行者にとって「有利」なこともあります。
 普通に考えれば、成田・関空からのアジア各都市への飛行は、いわば「おまけ」のようなものであり、日系を含むアジア系航空会社に比べ、比較的、安価な航空券が提供されてきました。

 「航空機未定」とされた航空券はノースウェストが結構あったりします。

 関空・台北線のように、本来の区間(デトロイト・関空)が、通常の時間に飛ぶため、関空から台北への飛行機は遅い時間に、台北から関空への飛行機は早朝の時間になるという不利がないわけでもありませんが・・

 一方的に不利な協定のおかげで、日本人客は、かなり得をしていたことになります。

 ノースウェスト航空は、経営危機のためデルタ航空に 「吸収合併」 されました。
 新デルタ航空として、いよいよ不採算路線をカットせねばならず、関空を切捨てるようです。
 おそらく、デトロイト・成田・台北になるんでしょうね。

 成田にはビジネス客の需要が大きいのに対し、関空にはビジネス客の需要がほとんどありません。ファーストクラス・ビジネスクラスにのってくれるビジネス客がいなければ、利益は出ません。

 基本的に、航空会社の収益という点に限りますと、エコノミークラスの客は足を引っ張るだけ、極論すれば、「ファーストクラスの乗客>ビジネスクラスの乗客>貨物>エコノミークラスの乗客」といわれるくらいです。貨物は「食べ物よこせ」「飲み物よこせ」「パーソナルテレビをつけろ」などという文句は言いません。

 
 最後の、新生デルタ航空(旧・ノースウェスト航空)便が、来年(平成21年)関空から消えることになりそうです。

 不公平な以遠権で得をする日本人旅行者は、成田空港を利用できる人だけになってしまいます。
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