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2013年バックナンバー

外来語

テレビ番組で理解できない外来語が多すぎて精神的苦痛を負ったとして、71歳の男性が、NHKに対し141万円の慰謝料を求める訴訟を名古屋地方裁判所に提起したそうです。
 140万円だと簡易裁判所の管轄になりますから、地方裁判所で確実に審理してもらえるようにしたのでしょう。

 昭和21年2月から始まったNHKの「英語会話」で、「証誠寺の狸ばやし」のメロディーにのせたテーマ曲があったそうです。 
「Come, come everybody. How do you do, and how are you? Won't you have some candy, One and two and three, four, five? Let's all sing a happy song, Sing tra-la la la. 」

 「鬼畜英米」といわれた時代から、終戦後、半年くらいで「Come, come everybody.」ですから、日本人の「変身」の早さには驚かされます。
 それが、日本の戦後の繁栄をもたらしたのでしょう。


 話を、NHKへの訴訟に戻します。
 「やり玉」にあがっているのは、「システム」「リスク」「イブニング」「ケア」「トラブル」「コンシェルジュ」「アスリート」「ディープ」「コンプライアンス」などだそうです。

 「システム」や「コンシェルジュ」は、何という日本語を使うのかわかりません。
 訴状を見てみたいですね。

 「トラブル」などは、もう日本語でしょう。
 「イブニング」「ケア」「ディープ」「アスリート」なども、日本語化していて、恐らくわからない人の方が、ごくわずかだと思います。

 71歳の男性も、いずれ、ニュースなどから、時代劇などに興味が移っていくのではないでしょうか。
 時代劇で外来語を使われたら「たまった」ものではありません。
 もっとも、時代劇で「今日のノルマは」(ロシア語)とか「サボった」(フランス語)とか「チョンガー」(韓国語)などが放送されたことがあるそうです。英語が入っていないのも興味があります。


 なお、「リスク」は、安易に「危険」と日本語に替えるべきものではないと思います。
 「リスク」(risk)は、一般的に「危険」と訳されますが、「danger」とは異なります。

 経済学的に、「リスク」は「ある事象の変動に関する不確実性」と定義され、「価格変動リスク」「為替リスク」「デフォルトリスク」などが用いられます。利得がある不確実性を「アップサイドリスク」、損失する不確実性を「ダウンサイドリスク」と呼びます。

 「リスク商品」は、「損だけする商品」ではありません、結果的に「得をする」こともありえます。

 「リスク」は、そのまま「リスク」と呼べばよく「ある事象の変動に関する不確実性」と読み替えるのは賢明ではないでしょう。


 「コンプライアンス」は、一般に、(企業の)「法令遵守」と訳されます。

 遵守するのは法令のみにとどまりません。

 「コンプライアンス」とは、企業内の内規、企業倫理の遵守、社会貢献、さらに、に企業リスクを回避するために、どういうルールを設定し、どのように運用してゆくか、どのように環境を整備するかなどの意味を含みます。

 また、「コンプライアンス」は営利企業だけにとどまりません。
 公益法人も「コンプライアンス」重視が必要ですね。

 「コンプライアンス」は、そのまま「コンプライアンス」と呼べばよく「法令遵守」と読み替えるのは賢明ではないでしょう。


 ちなみに、外来語では「アーカイブ」「アナリスト」「インセンティブ」「インフォームドコンセント」「カウンターパートナー」「コンテンツ」なども難解といわれています。

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