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2013年バックナンバー

韓国の戦時徴用についての判決

平成25年7月10日、韓国の第2次世界大戦中に日本の植民地統治(併合)を受けていた朝鮮から 日本に強制徴用され強制労働させられたとして韓国人4人が新日鉄住金(旧新日本製鉄)に損害賠償を求めた訴訟差し戻し控訴審で、ソウル高等法院(高等裁判所)は、新日鉄住金に損害賠償の支払いを求める判決を言渡しました。

 平成25年7月30日、韓国の第2次世界大戦中に日本の植民地統治(併合)を受けていた朝鮮から 日本に強制徴用されされ強制労働させられたたとして韓国人が三菱重工業に損害賠償を求めた訴訟差し戻し控訴審で、釜山高等法院(高等裁判所)は、三菱重工業に損害賠償の支払いを求める判決を言渡しました。

 両方とも差戻審で、ソウル高等法院も釜山高等法院も、旧労働者の請求を棄却していました。

 韓国の大法院(最高裁判所)1部が、平成24年5月25日が、ソウル高等法院と釜山高等法院の請求棄却判決に対する上告に対し、原判決を破棄し、ソウル高等法院と釜山高等法院に差戻しました。

 理由は「1965年の韓日請求権協定は、日本の植民地支配に対する賠償を請求するための交渉ではなく、両国間の財政的・民事的債権・債務関係を政治的合意によって解決するためのもの」「韓日(日韓)請求権協定の適用対象には、日本が関与した不法行為による損害賠償請求権が含まれると見ることはできないため、徴用被害者の訴訟請求権は消滅していない」というものです。

 大法院の判決は、下級裁判所である高等法院を覊束(拘束)しますから(法院組織法8条)、ソウル高等法院も釜山高等法院も、大法院の判決に従ったまでのことということになります。

 新日鉄住金と三菱重工業は上告する方針ですが、韓国の大法院(最高等裁判所)が、旧労働者の請求権を認めたうえで審理を高等裁判所に差し戻したことが発端になったため、判断が覆る可能性は、ほぼ「ない」でしょう。


 なお、韓国の判決が確定したとします。

 新日鉄住金と三菱重工業が日本に有する財産に強制執行しようとすると、日本の裁判所で執行判決をとらなければなりません。

 民事執行法24条は以下のとおり定めています。
「1 外国裁判所の判決についての執行判決を求める訴えは、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が管轄し、この普通裁判籍がないときは、請求の目的又は差し押さえることができる債務者の財産の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。
2  執行判決は、裁判の当否を調査しないでしなければならない。
3  第一項の訴えは、外国裁判所の判決が、確定したことが証明されないとき、又は民事訴訟法118条各号に掲げる要件を具備しないときは、却下しなければならない。 」

 民事訴訟法118条は以下のとおり定めています。
「外国裁判所の確定判決は、次に掲げる要件のすべてを具備する場合に限り、その効力を有する。 
一 法令又は条約により外国裁判所の裁判権が認められること。 
二 敗訴の被告が訴訟の開始に必要な呼出し若しくは命令の送達(公示送達その他これに類する送達を除く。)を受けたこと又はこれを受けなかったが応訴したこと。 
三 判決の内容及び訴訟手続が日本における公の秩序又は善良の風俗に反しないこと。 
四 相互の保証があること。」

 「旧日本軍の従軍慰安婦問題等に関する最高等裁判所判所判決」があり、日本の最高裁判所の判決に全面的に反しますから「判決の内容が日本における公の秩序又は善良の風俗に反する」として、執行判決は出るはずはなく、新日鉄住金と三菱重工業が日本に有する財産に強制執行はできません。


 判決が確定すれば(本件では仮執行宣言がついているそうですから、確定しなくても)、新日鉄住金と三菱重工業が韓国に有する財産に強制執行できます。

 新日鉄住金の場合、韓国最大の製鉄会社で、かつて技術移転して創業を支援したポスコ(旧・浦項総合製鉄)の株式や、取引で発生した債権などの在韓資産があるとされています。
 三菱重工業も、韓国に財産があるかも知れません。


 日本の政府と最高裁判所は、昭和40年に締結された「財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定」により、「完全かつ最終的に解決されている」という解釈です。

 韓国政府は、原爆被害者と、いわゆる従軍慰安婦、サハリン残留韓国人の3つについては協定に含まれていないと主張しています。
 「強制徴用され強制労働させられた」ことは、協定に含まれているという立場です。

盧武鉉政権下の平成15年8月、韓国外務省は、「1965年の請求権協定合意議事録に強制徴用者の部分が含まれるとして、韓国政府が被徴用者の救済を怠ったと認め、慰労金や医療支援金の支給を始めています。また、新聞公告を通じて1975-1977年に補償を実施した」と宣言しています。
 李明博政権は、基本的に同様の見解を踏襲し、平成19年には「太平洋戦争戦後国外強制動員犠牲者支援法」を作り、2次補償を行っています。
 韓国は、政府と裁判所間で食違っています。
政府と裁判所の食違いをどうするつもりでしょう。


 他国の裁判所の判決に「どうこう」するわけにはいきませんから、このような判決が出る韓国への投資は、リスクを考慮して控えるというのが、日本企業のとるべき態度です。
 戦後初めて韓国に投資する会社はともかく、戦前から、韓国に投資し(投資していた会社と合併したり、投資していた会社を吸収した場合を含む)、現在も韓国に資産がある会社は、資産を引き揚げるしか自衛手段はありません。


 まともに司法が機能していない中国の「チャイナリスク」ならぬ「コリアリスク」です。
 中国は、欧米的な司法が機能しないのは「賄賂」「反日」といわれますが、韓国に、欧米的な司法が機能しないのは「反日」ですね。

 なお、韓国政府は、日本向けの投資誘致に力を入れてきています。
世界市場にダムや発電所などの大型事業を売り込む韓国の建設会社を、資金調達と信用面で支えているのは韓国の銀行ではなく、日本の銀行です。
 韓国の銀行は、世界水準からはかけ離れたレベルで、海外で事業展開する巨大企業を支える力はありません。

 サムスン電子が堅調のいまは、日本のメーカーが巨大投資を続け、銀行も多額の融資をしていますが(平成25年月には、みずほ銀行が韓国の輸出入銀行に500億円の融資をしています)、強制執行により、日本企業の在韓資産が差し押さえられるようなことになれば、日本側に「韓国は法治国家ではない」との認識が決定的になるでしょう。
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