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2013年バックナンバー

消費貸借

民法には、貸借の典型例として、「賃貸借」「使用貸借」「消費貸借」を定めています。

民法587条は「消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる」となっています。

 私が、大学で民法を勉強しているときには、消費貸借の典型例は金銭であるが、米、味噌、醤油などの貸借も、使うため(消費するため)に借りるのであるから、借りた物を一旦消費して、後日、同種・同等・同量を返還するから消費貸借にあたると勉強しました。

 私が法律家になってから、消費貸借といえば、金銭消費貸借しか見たことはありません。

 私が小さいころ、米、味噌はありませんが、隣の家の人が醤油を借りに来たことはありました。
 今なら、醤油はコンビニで買えますね。
 米は急になくなるものではないでしょうし、味噌がないから困るということもなさそうです。

 もっとも、米、味噌、醤油を返さないから訴訟だとか、品質の悪い米、味噌、醤油を返したから訴訟だということにはなりませんね。


 日本政府は、平成25年12月23日、武装勢力の襲撃で治安が悪化している南スーダンで、国連平和維持活動(PKO)に参加している陸上自衛隊部隊から、銃弾1万発を国連を通じて現地の韓国軍に無償で提供したと発表しました。

 日本側は、施設を警備する韓国軍に銃弾が不足し、提供がなければ避難民の生命に危険が及ぶ可能性が高いと国連が判断、日本に提供を要請し、日本は「緊急の必要性・人道性が極めて高い」とする官房長官談話を出しています。

 韓国国防省報道官は、平成25年12月24日、治安情勢が悪化している南スーダンで、国連平和維持活動(PKO)で展開中の韓国軍に銃弾1万発を日本が提供したことに関し、「予備量を確保するため臨時で借りたものだ。(銃弾は)不足していない」と語ったそうです。

 あまり可否について議論する余地はなさそうです。
 自衛隊が、韓国軍に銃弾を貸さなかったため、韓国軍や避難民に死傷者が出たとしたら、大問題ですね。
 貸す貸さないの選択の余地はなかったと思います。

 それはともかく、銃弾1万発は、贈与ではありませんから貸借でしょう。

 単純な消費貸借ではなさそうです。

 使用分については、後日同種・同等・同量を返還しますから消費貸借、未使用分については、現物返還という貸借ということになると思います。

 使用した「made in Japan」の銃弾を、未使用の「made in Korea」の銃弾で返還した場合、同種・同等・同量を返還したといえるのでしょうか。

 できれば、銃弾を返還してもらうより、「買取り」してもらったほうがよさそうな気がします。

 もとより、現実に使用されていることのないのが最善です。

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