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2013年バックナンバー

解雇ルールの改正の検討

 平成25年2月22日の新聞報道によりますと政府の規制改革会議が示した主要論点に「雇用」が盛り込まれたそうです。

 OECD(経済協力開発機構)の平成18年の対日審査報告書では、日本は従来、所得の不平等度が少ない社会と見られてきたが、「最近は所得格差が拡大している」と警告していて、その理由として、日本は解雇に関する法制が未整備で、正社員の解雇が困難な点をあげ、「正規雇用への保護が手厚すぎる」がために、企業は非正規雇用への依存を強める結果となり、「所得の低い非正規雇用者の増大から、所得格差が拡大した」と指摘しています。

 日本の判例では、雇主企が整理解雇を実施するには「4要件」と呼ばれる条件を満たす必要があるとされています。
 1 人員削減の必要性
 2 解雇回避の努力の有無
 3 対象者選定の合理性
 4 手続きの妥当性

 確かに、企業が右肩上がりの成長を続けているときには、整理解雇の「4要件」は妥当だったでしょう。

 しかし、現在、日本の企業は、国内外のきびしい競争にさらされていて、整理解雇の困難な「正社員」ではなく、パート・アルバイトなどの「非正規社員」を「調整のための安全弁」としています。

 労働需要が大きいからといって、正社員を多量に雇用したのでは、総需要の減少、他社との競争などにより、余剰人員が出た場合、正社員を解雇するのは困難ですから、正社員の雇用を抑制し、整理解雇や雇止めなどにより、パート・アルバイトなどの「非正規社員」を多く雇用するということが行われています。

 ライバル企業などのない大阪弁護士会などでも、派遣社員を多く雇用しているようです。
 半年くらいで、採用退職を繰返している職員がいます。
 派遣期間が長期になりすぎると、正社員となることの申込みをしないと行けなくなりますので、派遣されている職員も定期的に変えているそうです。
 大阪弁護士会が、不当解雇無効確認請求訴訟などをされたら「しゃれ」にはなりません。

 ちなみに、毎月4万7000円の会費を払う、即独・軒弁などの所得より、大阪弁護士会の職員の所得が多いなど、「本末転倒」ともいわれています。
 もっとも、弁護士は、自営業者ですから、所得の少ない人はいますし、弁護士資格をもっているから、弁護士会職員より高い給与をもらうべきであるという理屈にはなりませんし、弁護士になる資格を持ったまま、弁護士会職員になればいいだけの話で、弁護士になるということは、それなりのメリットがあるのでしょう。

 政府の規制改革会議の議題には、金銭補償による解雇のルール化が検討されているそうです。

 ちなみに「地獄への道は善意で舗装されている」という格言をご存じでしょうか。

 意味は「良かれと思って行ったことが悲劇的な結果を招いてしまうこと」「悲惨な出来事が皮肉にも善意の行いが発端となっていること」です。

 労働法関係で、労働者の権利を厚くしてしまいますと、おのずから正社員として雇用することには慎重になり(いったん、ババを引けば、無用なだけでなく、有害となります)、パートや派遣など非正規雇用に頼らざるをえなくなり、景気が悪くなると悲惨な状態になります。
 パートや派遣の権利を厚くすると、企業が、国内や国外の企業との競争に敗れ去ります。

 ただ、企業が国内だけではなく、世界を相手に競争していかなければならなくなっているのは間違いなく、世界との競争に負けないためには、金銭補償による解雇のルール化が必要かも知れません。
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