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2013年バックナンバー

日本からの盗難仏像と韓国の裁判所

大阪弁護士会とソウル弁護士会は、相互に訪問するなど、良好な関係にあるようです。
 京阪神には、相当多くの在日韓国人が住んでおられます。

 また、昭和20年8月15日までは、日本と韓国は同一の国であったため、基本的に同じ法律が適用されていましたし、現在の韓国の各種の法律も、日本と似ている法律が多いです。
 私が扱う事件では、韓国人の方の離婚と相続関係くらいですが、「例外に要注意」というくらい似ています。


 韓国・大田地方裁判所は、平成25年2月26日、平成24年10月に長崎県対馬の観音寺から盗まれ、韓国で見つかった仏像2体のうちの1体について、返還を差止める内容の仮処分決定を出したという報道がありました。

 問題の仏像は、対馬市豊玉町所在の観音寺が所蔵していた、長崎県指定有形文化財の「観世音菩薩坐像」です。
 韓国の窃盗団に盗取され行方不明になっていたのですが、窃盗団の摘発により、所在がわかりました。

 韓国の浮石寺が、当該仏像は、14世紀に和冦の時代に略奪されたものだと主張して、保管している韓国政府に移転禁止を求める仮処分を申請していました。
 韓国・大田地方裁判所は、「観音寺は(菩薩坐像を)正当に取得したことを訴訟で確定させなければならない」などと判示したそうです。
 観世音菩薩坐像は現在、韓国・大田市内の国立文化財研究所に保管されたままで、永遠に返還しないということになってしまいます。


 韓国の民事保全手続きは知りませんが、日本ならありえません。

 まず、韓国の浮石寺が、現在、仏像の所有者であることを疎明(証明より低いレベルの証明)をしなければなりません。
 当該仏像が、韓国の浮石寺の仏像と同一の仏像であるということの疎明は難しいでしょう。
 700年経過しているのですから、善意取得や時効取得されず、現在も所有しているなどという疎明は、ほぼ不可能でしょう。
 仮処分ですから、保証金が必要なはずですが、時価13億円として、最低でも、邦貨換算で、3億円~4億円の保証金がつまれたという報道もありません。

 「観音寺は(菩薩坐像を)正当に取得したことを訴訟で確定させなければならない」というのは、立証責任が全く逆です。
 韓国中部にある瑞山の寺が観音寺に対し、訴訟を提起し、14世紀に和冦の時代に略奪されたものであること、その後、日本の寺社に善意取得や時効取得されていないことを証明して勝訴しなければなりません。
 無理でしょうね。


 韓国は、日本のような、西欧民主主義国の法律が支配する国ではなさそうです。
 韓国の裁判官、韓国の弁護士も、西欧民主主義国の法律に「どっぷりつかった」日本の裁判官、弁護士と異質のものと考えた方がいいのかも知れません。


 あとは、ついでの話になるのですが、観音寺の住職は「伝承によると、この仏像は李氏朝鮮時代、朝鮮半島に吹き荒れた仏教弾圧から逃れるため、対馬に持ち込まれた」「朝鮮半島では仏教が盛んだった新羅、高麗時代(7~14世紀)に多くの仏像が制作された」「14世紀末に李氏朝鮮時代に入ると、一転して儒教が国教となり、仏教は弾圧の対象となった。仏像の没収や破壊が繰り返された」「そんな時代に、交易などで朝鮮半島に渡った日本人が惨状を見かね、仏像を救出するために日本に持ち帰った。古来、日本と朝鮮半島を結ぶ交易の中継点だった対馬には、その仏像が多く残されている」といっています。

 韓国に行くと、寺や仏像のあるところは、とんでもない「辺鄙」な場所です。
 1万ウォン札に印刷されている世宗大王は、韓国で人気のある王様ですが、世宗大王を含め、李氏朝鮮時代の王は、仏教を徹底的に弾圧しました。
 「辺鄙」なところにある寺や仏像だけが「生延びた」ということになります。

 住職の「韓国人から感謝されることはあっても、「略奪」呼ばわりするとは、怒りを通り越して空いた口がふさがらない」との言葉どおりでしょう。

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