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よもやま話 バックナンバー2/2

情報戦略

 欧州連合(EU)の欧州委員会(EC)は、今年(平成20年)4月、欧州における航空機内の携帯通話サービスについて、搭乗客は、機内でも携帯電話で通話やメッセージ送受信ができるようにすると発表しました。

 それで、連想されるのが『ユナイテッド93』(United 93)という映画です。
 93便の乗客の一人がが、家族に携帯電話で連絡し、他の飛行機2機がWTCに激突した事を知り、ハイジャッカーを攻撃し、その結果、ピッツバーグの森林に墜落した「美談」とされています。航空交通管制との交信記録テープはFBIによって押収・保管され、これに基づいて話がつくられています。

 しかし、欧州委員会(EC)委員会の発表したように、航空機から、いったん人工衛星に電波をとばし、それを基地局で受信するというシステムなら問題はないのですが、2001年9月11日時点において、通常の携帯電話では機内からかけたとしても、飛行機が高速移動し、基地局につながらないため通話不能というのが常識的な気がします。
 また、航空機内から、家族に電話しようとする乗客がいたというのも「?」がつきます。

 通常は、むりやり「美談」にされただけで、空軍機のパイロットとユナイテッド93便のパイロットの連絡が取れないため、ハイジャックされたとして、ユナイテッド93便はアメリカ空軍機に撃墜され、ペンシルべニア州ピッツバーグの森林に墜落したというのが妥当ではないでしょうか。
 緊迫した状況でしたでしょうから、空軍パイロットに撃墜の許可を与えていたでしょうし、連絡に手間取るようなら、ワシントンDCやニューヨークなど大都市近郊に行った時点で撃墜するより、撃墜して影響の少ない場所で撃墜してしまうのが合理的です。

 少なくとも、乗客が、飛行中の航空機内から「携帯電話」で家族と電話したという話よりは「まし」な推論でしょう。


 情報戦略といえば、チャーチルのコベントリーの市民「見殺し」が有名です。

 ドイツは、フランスなどを制圧してからイギリス本土へ本格的な空襲を開始していましたが、ドイツ軍は「エニグマ」という優秀な暗号作成機を使って通信していましたから、暗号の解読がなかなかできなかったようです。
 日本の「紫暗号」が単純で解読が容易だったのに比べ、エニグマは3つの歯車と電気プラグで暗号を組み替えるもので、その組合わせの数は10京(兆の10万倍)あり、毎日、暗号の組み合わせを変えてくるため、暗号の解読は事実上不可能とされていました。

 現物の「エニグマ」を入手したとか、コンピュータの前身となる機械を使用したとか、いろいろ言われていますが、見事にエニグマ暗号の解読に成功したそうです。

 暗号を解読した結果、ドイツの攻撃目標はロンドンの北西にあるコベントリーという町で、攻撃の日は、1940年11月14日と判明していたにもかかわらず、チャーチルはこの情報を無視。コベントリーは無防備のまま空襲を受け、街は壊滅的な被害を受けたそうです。
 コベントリー市民に避難命令を出していたら、ドイツ軍が「エニグマ」が、イギリスに解読されているということが「まるわかり」となってしまいますから、1000人やそこらの死者程度の小都市は見殺しにして、ドイツ軍が「エニグマ」が解読されていないと思いこませた方が得となる、つまり、チャーチルはコベントリーを失うことよりも、イギリスの暗号解読能力を知られることを恐れたという話です。

 F.D.ルーズベルトが、日本軍の真珠湾攻撃を、暗号解読により知っていたという話より、信憑性がありますね。
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