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よもやま話 バックナンバー2/2

一挙手一投足

現在使われている言葉には、本来の意味から離れた意味で使用されていることがあります。

 たとえば「一挙手一投足」という言葉ですが、「○○さんの一挙手一投足に注目が集まっている」「一挙手一投足に気を配る」などで「こまかな一つ一つの動作や行動」という意味ですね。

 ただ、本来の「一挙手一投足」は、韓愈の書物の言葉に由来するもので、「一度手を挙げ、一度足を踏み出す意」で、「ちょっとした努力。わずかな手数」を意味する言葉です。

 ただ、「一挙手一投足」ということばを、本来の「ちょっとした努力。わずかな手数」という意味で当たり前に使っている職業があります。

 裁判官、弁護士など、つまり法律家です。

 たとえば、連帯保証人の署名・押印をもらう時、本人との面接をしていない、実印を押してもらって印鑑証明をもらってもいないということになりますと、連帯保証人が「しらばっくれた」場合、筆跡鑑定で有利な結論が出ない場合、通常敗訴します。

 裁判所の紋切り口調は「面接もしていない、実印も押していないことはもちろん、電話による確認など意思確認すらしておらず、連帯保証人の意思に基づいていたとは認められないし、また一挙手一投足の手数にすぎない意思確認を怠った過失があるから「表見代理(註。代理権の存在について本人の責任で、一定の外観が生じており、相手方がそれを過失なく信じた場合は、表見代理として、代理が有効に成立するという制度のことです)は成立しない」とするものです。

 その他にも「一挙手一投足」の手間を惜しんだということを理由の一つとして敗訴ということもあります。

 もっとも、結果から見れば「一挙手一投足の手間を惜しんだ」と言われても、法律家自身が「一挙手一投足の手間を惜しんだ」ということは、よくあります。
 私生活もそうですが、仕事の上でも、ルーティンワークとして、分かり切っていても、念のため電話一本かけておく、電話をかけたら内容と日時を欄外にメモしておく、ファクシミリを送ったら、ファクシミリの送信欄をチェックして、欄外に「○○時○○分fax済」とメモ(専用のゴム印ゴム印にボールペンで記載)しておくことなどが重要です。

 ルーティンワーク化していることは、後になって、証明力は結構あるのです。
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