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司法 バックナンバー 3/3

女性修習生受難の時代-弁護士大増員の余波

弁護士大増員時代で、大阪弁護士会に、平成19年には「イソ弁」になれない、つまり就職ができない人が400人程度ででそうだということは、昔のコラムに書きましたが、いろいろ努力される方があり、数は少なくなるみこみだそうです。

 その中でも苦戦をしているのは「女性修習生」のようです。

 依頼者の中には、女性弁護士を担当にされることを嫌がる方がおられます。
 病院の医師でも、女医さんではなく、男性の医師の方がいいという方がおられます。意外に思われるかもしれませんが、女性患者が女医さんを嫌う傾向がある(産婦人科除く)ということを、知人の医師から聞いたことがあります。

 医師のことは知りませんが、一般的にいって、女性弁護士は、男性弁護士より有能なことが多いです。

 ある問題についての「ひらめき」「思いつき」という点では、男性の方が勝って(まさって)いるかのようです。
 もちろん、昔は、女性弁護士の数が圧倒的に少なかったのですが、それを割り引いても、世間の耳目を「あっ」といわせるアイデアは、男性弁護士の方が圧倒的に多いです。今のところですが・・

 「作業を淡々とこなす」という点では女性弁護士が優秀でしょう。
 男性弁護士は「あきっぽく」、淡々と仕事をやり遂げようとしない方が多いです。
 という意味では、破産管財人や相続財産管理人など、細かい作業をこつこつとこなせるのは、やはり女性弁護士でしょう。
 私1人が手がけるような規模の破産管財人は女性弁護士の確率の方が高いです。
 他の弁護士と共同でする、ある程度の規模の破産事件や会社の民事再生の管財人・監督委員は、まず男性ですが・・

 一般事件は、事件にもよりますが、「人」によりますね。
 男性が手強いとか、女性が手強いとかはありません。

 ということで、なぜ、女性修習生が敬遠されているのでしょう。

 私の事務所は、未来永劫、男性・女性をとわず、修習生を採用しないことは間違いないでしょうから、事務所訪問に来てもらえなくなり困るという心配がありませんので、推測を書いてみます。

 結婚・妊娠・育児の要素が大きいと思います。

 ある男性修習生が、持病をかかえていて、いつ何時、3ヶ月入院して仕事にならない、退院後も、仕事をする時間が限られてしまい、いくら急ぐ仕事があっても、朝は遅くしか来ないし、夜は一定の時間に必ず帰る、それも、1度ではなく、2度、3度あるかもしれないとします。

 そのような男性修習生を、自分の息子ならともかく、好きこのんで選ぶ弁護士は珍しいでしょう。
 仕事に差し障りが出るからです。

 よほど大きい事務所を除けば、法律事務所は、しょせん零細企業です。「ぎりぎり」の数で、夜遅くまで仕事をしています。1人でも抜けたら、他の弁護士が「過労死」してしまうかもしれません。新人の補充は実質年1度限り(新旧ほぼ同時期)のみです。

 女性修習生は、妊娠、出産、育児の可能性があります。
 健康なら「ある程度前から予定は立つかもしれません」が、「3ヶ月入院して仕事にならない、退院後も、仕事をする時間が限られてしまい、いくら急ぐ仕事があっても、朝は遅くしか来ないし、夜は一定の時間に必ず帰る」「1度ではなく、2度、3度あるかもしれない」ということになる可能性があります。実家の母に育児は任せられても、妊娠出産は、ピンチヒッターというわけにはいきません。

 少規模事務所にとっては致命的です。
 抜けた穴は自分の事務所がうめなければなりません。仕事を敬遠すれば、よその法律事務所に顧客がいったっきりになるかもしれません。

 中には、妊娠出産後の具合が悪く、そのまま退職する弁護士さんがいます。夫が同業者ということが多いです。
 雇用している側の弁護士は、産休あけを、一日千秋の思いで待っていたのに・・


 ということで「そろばん勘定」に長けた大阪の弁護士さんなら、多少の能力の差には目をつむって、男性修習生を選ぶことが多くなるのではないでしょうか。

 もちろん、大きな事務所なら、さほど気にすることはないので、修習生の男女比に相当するだけの修習生を採用しているようです。しかし、大阪には、それほど大事務所は多くありません。

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