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司法 バックナンバー 3/3

good lawyer, bad neighbor

 「良き法律家は悪しき隣人」(good lawyer, bad neighbor)と言うことわざがあります。
 「良き法律家は悪しき隣人」というのは、当たらずといえども遠からずというところかもしれません。

 私自身が「良き法律家」かどうか、「悪しき隣人」かどうかはわかりません。

 ただ、私が家を建てたとき、建築請負業者は「紛争を恐れたのか」、全く問題なく建てられています。同じ建築業者の他の家は、必ずしも、そうとばかりは聞いていないので、「弁護士」という職業で得をしているかもしれません。

 なお、今年の一番印象に残った「事件」について書いてみます。

 私は、ミュンヘンのホテルの部屋で寝ているうちに盗難にあったのですが(私は、オートロックと思いこみ、内側から鍵をかけずに寝こんでしまい現金の盗難にあいました。下手に目覚めていたら怖かったですね)、損害賠償事件の交渉を、当然の話ながら、着手金なしに自分ですることになりました。

 私は、ホテル側に責任がある、すなわち、フロントが盗難犯をやすやすと部屋に忍び込ませた過失がある、あるいは、ホテル従業員が盗難犯の共犯だったと主張し、ホテル側は、鍵をかけていない宿泊客である私に全面的に責任があると主張しました。

 ドイツでは、現金の場合でも、800ユーロを限度として、ホテルの加入している賠償責任保険がでます。盗難金額は845ユーロ相当でした。

 結局、帰国後に、電子メールでやりとりしたのですが、ホテルか私、どちらに責任があるかで、保険会社と電子メールでやりとりを繰返すうち、保険会社が満額の800ユーロを支払うことで決着がつきました。

 保険会社担当職員の交渉方法は上手ではありませんでした。
 「ドイツ関係諸法令・判例に照らし」「支払えない」と主張したのが大ミスで、「ドイツ語の法令も、判例も読解可能ですから、全部メールしてください」と返答したところ、結局、「諸法令」と称していたのが「ドイツ民法」(BGB§254)の「過失相殺の条項」だけで、結局「判例」も全く出せませんでした。
 調べもせずに、「どうせ日本人に、ドイツの法律や判例は読めない」、「ドイツ関係諸法令・判例に照らし」といえば、どうせ反論できず諦めるだろうと高をくくっていたのでしょう。

 また「たかが、800ユーロのために手数をかけられない」という事情もあるでしょう。銀行の金銭出納ミスを「雑損」「雑益」で処理するお国柄です(日本の銀行のように、残業してまで計算をあわそうとしません)。

 ただ、私にとっても13万円強の金額では「割にあわない」「事件」でした。取得した金=全額私の収入で、また、所得税も消費税もかからないのが、せめてものなぐさめでしょうか。

 法律相談や事件の依頼で、「コスト・パフォーマンス」「割に合うかあわないか」と説明することが多いのですが、当事者になってみると、金額面では割切れない、プラスアルファがあることがわかりました。


 一般的に、弁護士は、「嫌われる業種」のように思います。怒らせると「理屈っぽい」、「うるさい」、「何かといえば」「法律を示せ」「証拠をみせろ」という方が多いことも確かです。

 「できれば、かかわりたくない」というのが本音でしょうね。
 関西人の法律家なら「つっこみ」大好きですから、なおさらのことかもしれません。

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