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司法 バックナンバー 3/3

一人事務所-私の場合

日弁連「弁護士白書」2006年版からすると、法律事務所の数と規模は以下のとおりです。

 合計事務所数  10,272
 1人事務所数   8,092
 
 私は、ずっと「一人事務所」のつもりです。

 最初に述べておきますと「一人事務所」でいる「本当」の理由は、儲かっていないからです。
 報酬の価格設定が「人並み」ということが影響しているかもしれません。「時価」や「ぼったくり」はありません。

 以下「公式的」な理由を・・・

 「一人事務所」でいる理由の一つは、一人事務所は、ある意味「ローリスク・ローリターン」だからです。
 弁護士を一人でも雇うと、固定費がかかります。
 もちろん、弁護士の給与・賞与の負担は当然ですが、事務所のスペースを広くしなくてはなりませんし、事務員数が増えるなど、固定経費の負担が増加します。
 かつて私のコラムで書いたことがあるのですが、法律事務所には、原材料費など「変動経費」が実質上なく(電話代、郵便代、コピー代が多少変わる程度)、実質、固定された一般管理費のみです。
 固定費を上げすぎると、損益分岐点にまで収入をもっていくのに苦労します。損益分岐点まで持っていけば、あとは収入増加分=所得増加分です。
 うまく収入が入ればいいですが、うまくいかなければ悲惨です。
 また、どうしても、売上を上げようとすると、費用対効果の悪い(割に合わない)事件を受けざるをえなくなります。
 一人事務所なら、損益分岐点まで収入を持っていくのはさほど難しくありませんし、費用対効果の悪い事件を受任する必要がありません。
 もちろん、一人でできる仕事量は限られていますから、「ローリスク」ではあっても、「ハイリターン」は全く望めません。

 理由の一つは、気楽にやりたいからです。
 弁護士は依頼者への気遣い、裁判所への気遣いなど、結構心労のたまる仕事です。
 弁護士は、「一般サラリーマンなんかやっていられない」、いわば「野武士」ですから、雇用するにせよ、共同経営するにせよ、余計な気遣いをしなければならないからです。
 一人事務所には、同一事務所の他の弁護士への気遣いの必要がありません。

 もう一つの理由は、性格上「人任せ」にするのが嫌だからです。
 自分の信用で受任して、若い人に「任せる」ということは性格からして無理です。
 他の弁護士が主任の事件にも配慮しようとすると、手数がかかります。
 私は、独立する前、高齢だった前のボス弁が新規採用した弁護士に、半年事件を引き継ぎ独立しました。
 それまで、6時に帰れていたのが、新人弁護士さん仕事のペースにつきあっていると、帰宅が9時、10時になった「苦い」経験があります。
  
 理由のもう一つは、それが「売物」になるからです。
 ある信頼できると思った弁護士に依頼しようとしたはずが、若い弁護士に事件を丸投げされたのではたまったものではありません。
 少なくとも、私の事務所では「丸投げ」などしようがありません。

 理由のもう一つは「見栄」をはる必要を感じないからです。
 やはり、一般の人が見ると、手広くしている事務所が、「成功して」いるように見えます。経済的に余裕があるかどうかは別問題ですが・・
 「見栄」をはるには、事務所を大きくするのが手っ取り早いのです。
 もちろん「見栄」をはりたいのが、一般でしょう。
 ただ、私は、事務所の規模で「見栄」をはる必要は感じていません。私の職歴、学歴などで判断していただければ十分(このコラムを弁護士仲間が見ると「友達をなくす」かもしれませんが・・)と考えています。
 
 今から思えば、「一人事務所」は「大正解」だったと思います。
 大きく儲かることなどは「夢のまた夢」ですが、逆に、「お金」の心配を始終する必要もあまりありません。
 これだけ弁護士が増えてくると、「一人」の「身軽」さのありがたさがよくわかります。
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