本文へ移動

司法 バックナンバー 3/3

弁護士の広告に債務整理が多いわけ

弁護士の広告は、債務整理(自己破産、個人民事再生、任意整理、過払い金返還)を中心としたものが多いと思いませんか。

 インターネットに限りません。
 「電車」「地下鉄」「駅」などの広告もそうです。

 理由の1つ目は、債務整理が「お金」になるようになったからです。
 過払い金返還請求が容易になされるようになりました。
 昔の自己破産、任意整理(個人民事再生はありませんでした)は、普通の弁護士にとって、全く割の合わないボランティア的な仕事でした。
 手を挙げれば、いくらでも事件は来ました、というか、押しつけられました。
 また、サラ金・クレジットの法律相談などは、担当してくれる人員不足のため、弁護士会事務職員が、電話で弁護士に依頼しまくっていましたし、それでも追いつかなくなり、「サラ金・クレジットの法律相談要員」の特別募集をしていました。
 破産などは「手離れ」が早いので「まし」なのですが、任意整理で3年間の分割などになりますと、分割金の支払いがないとの督促が弁護士に来て、毎月1日は大変でした。私の場合「2度約束を守らなかったら業者から直接請求されることを了承する」という念書を取って自衛していますが・・
 ただ、現在は、「債務整理」に関連して、過払金の返還が期待でき、また、簡単に返還請求できるようになったので、やろうとしても、仕事自体が減っています。
 なお「債務整理の法律相談無料」という事務所へ行くと、過払い金の期待できない事件は「不採算」と断られることがあるようです。「断られた」と言って大阪弁護士会の法律相談に来る人がいました。

 理由の2つ目は、債務整理は、自分の弁護士としての信用を毀損する恐れがないからです。
 一般事件では、「勝訴」「敗訴」があり、弁護士の腕でどうにかできるというより、むしろ、最初の証拠の段階で「けり」がついている場合が多いのです。
 負ければ信用をなくしますし、勝てば信用を得られます。信用というのは「裁判所」「紹介者」「依頼者」に対する信用です。
紹介者が誰かにより、大体、事件が「筋がいい」のか「筋が悪い」のか想像がつきます。
 「筋がいい」と、労少なくして報酬は多く、「筋が悪い」と労多くして報酬はわずかになります。
 紹介者が大事といわれるゆえんです。
 その点、勝ち負けのない債務整理系の事件については、誰の事件をやっても弁護士報酬にかわりはありませんし、裁判所の信用を損なうこともありませんから(例外はあります。依頼者の「嘘」を事前に見抜けなければ、弁護士の「恥」になります)、紹介者なしの、広告できたような依頼者の事件でも受任できるのです。
 買った負けたで、トラブルになる恐れもまずありません。

 理由の3つ目は、事務員の有効利用です。事務員に「やりがい」を持ってもらうと言換えてもいいでしょう。
 弁護士がOA機器を自由に使いこなせるようになると、事務員の仕事が「電話番」「お茶くみ」「コピー」「ファイリング」程度になってしまいます。
 債務整理系は、勝ち負けがありませんし、ある程度定型化しているので、重要な点について弁護士がやれば、こまかい資料づくりなどは事務員で十分こなせますし、現に、事務員が機械的な部分の大半を処理している事務所が多数でしょう。
 ちなみに、裁判所が関与して行う研修も、破産関係の「細かい」「取扱い」が「変わりました」程度の説明会は、講師は裁判官ではなく書記官で、受講者は弁護士ではなく事務員です。
 裁判所も、よぼど重要な事件でもない限り、個人の破産や民事再生事件は、実質、裁判官ではなく、書記官が動かしているといって過言ではないと思います。


 もっとも、弁護士が大増員になってますから、過払いがなくても、割に合うはずのない「国選弁護」と同様、「債務整理」も、都市部では債務整理事件も取合いになっていたと思います。
 出資法の改正により、あと少しすれば、過払返還は激減するでしょう。
 もっとも、サラ金・クレジット会社の「貸し渋り」で、破産・個人民事再生・任意整理に追い込まれる人は、増えてくるのは確実です。

TOPへ戻る