本文へ移動

司法 バックナンバー 3/3

刑事訴追を受けた場合の裁判官の報酬は

宇都宮地方裁判所判事が、ストーカー規制法違反罪で逮捕・起訴されました。

 裁判官弾劾裁判所での弾劾裁判がなされるようですから、罷免されれば裁判官の報酬は受けられなくなります。

 それまでは、どうでしょう。
 国家公務員法79条には「職員が、左の各号の一に該当する場合又は人事院規則で定めるその他の場合においては、その意に反して、これを休職することができる」「心身の故障のため、長期の休養を要する場合」「刑事事件に関し起訴された場合」となっています。
 ですから、起訴されれば休職となり給与が支給されないことがあります。

 しかし、裁判官は、独立性の保持のため手厚い身分保障があります。

憲法第80条2項には「下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない」となっています。

 例外としては、裁判官の育児休業に関する法律4条「育児休業をしている裁判官は、裁判官としての身分を保有するが、その育児休業の期間中報酬その他の給与を受けない」があります。
 優秀な女性裁判官が、出産・育児のため退官してしまうのはもったいないとの趣旨でつくられた法律です。育児休業期間は報酬はありませんが、復職すれば、同一時期に任官した裁判官と同額の報酬がもらえる(従前は、復職しても、同期の裁判官と半永久的に差がつきました)ことになります。

 ということですから、裁判官は、病気で長期入院・うつ病などによる自宅療養をしていても、たとえ、刑事訴追を受け拘置所暮らしをしていても、報酬は満額受け取ることができます。

 もちろん、病気が重い場合は、裁判官分限法1条「裁判官は、回復の困難な心身の故障のために職務を執ることができないと裁判された場合は、日本国憲法の定めるところによりその官の任命を行う権限を有するものにおいてこれを免ずることができる」との規定と裁判により、罷免されます。
 船から飛込み自殺をし、死体が見つからない裁判官がいましたが、さっさと「回復の困難な心身の故障のために職務を執ることができない」と裁判され、遺族は報酬が受け取れなくなったこともありました。

 刑事訴追を受けた場合、裁判官が退官届を提出し、免官されれば報酬の請求権は失われますが、弾劾裁判にかかるようなケースでは、退官届を出しても免官はされません。
 弾劾裁判により、法曹資格を剥奪する必要があるからです。
 依願退官を許したのでは、弾劾裁判にかけられませんから(弾劾裁判にかかるのは現職の裁判官のみです)法曹資格剥奪ができません。また、依願退官の場合、退職金を満額支払わなければなりませんし、年金の基礎年金を超える部分の受給権を剥奪できません。

 当該判事の場合、経験年数からして判事4号月額84万3000円の報酬(大都市調整手当は最初からありません)と期末手当などの報酬を受けていると思われます。
 平成20年5月21日に逮捕されていますから、今日、平成20年6月16日(毎月当月分15日払。15日が土・日・祝なら次の平日)には報酬が、平成20年6月30日には期末手当などが支給され、弾劾裁判で罷免されるまで毎月15日に報酬が支払われることになります。
 「ほっとけない!」でしょうか。

TOPへ戻る