本文へ移動

司法 バックナンバー 3/3

弁護士自身の個人民事再生

昔、レインメーカーというアメリカ映画がありました。
 うろ覚えですが、主人公の弁護士は、ロースクール通学中に自己破産を申立て免責を得たというストーリーだった記憶があります。

 話を現実の日本に戻します。

 私たちのころは、司法試験に「さえ」合格すれば司法修習生になれました。

 現在は、通常のロースクールを経て修習生になろうとすると、法学既修者で2年追加です。授業料は結構かかります。親に財力がなければ、奨学金をもらわなければなりません。
 また、 平成22年11月以降採用された司法修習生については、さすがに授業料はいりませんが、給与がなくなり貸与制度となります。1年で250万円程度ですね。ちなみに、研修専念義務がありますから、副業(アルバイト)はできません。
 さらに、各単位弁護士会に登録するために50万円程度のお金がかかります。これは、分割支払は可能です。

 親が裕福な人はいいですが、そうでもなければ、多額の借金をかかえて弁護士をスタートすることになります。
 まして「軒弁」や「宅弁」ということになると、当座、まともに収入はありません。


 そのような人のために、借金をなんとか圧縮できないかということを考えてみました。

 弁護士は、破産してしまうと弁護士資格を失います(弁護士法7条5号)。
 しかし、個人民事再生なら、弁護資格を失いません。

 ということは、奨学金と、修習生時代国から貸与された250万円と、弁護士会登録の際の分割金残金を、個人民事再生手続きを使って5分の1程度に圧縮するということが可能かも知れません。
 可能であれば、大学時代の奨学金を5分の1程度に圧縮することも可能でしょう。

 育英会と国と弁護士会は、個人民事再生に反対するでしょうから、小規模個人民事再生手続きはとれません。
 債権者が全員反対しようが、有無をいわせず認可がもらえる給与所得者個人民事再生手続きをとることになります。

 すると、自営業者扱いの「軒弁」や「宅弁」は不適格者(他のアルバイトをして給与をもらうという手はあるかも知れません)で、「イソ弁」だけが対象となりますね。

弁護士に依頼すると37万5000円+実費程度が必要となりますし、弁護士の資格を持っているのですから、本人申し立てでできそうです。
 ただ、本人が申立てをすると、例え弁護資格を持っていようと、本人扱いで監督委員の選任のため15万円の予納金はいるかも知れません。あと、4万円程度の実費がかかります。

 3年間で借金の5分の1を返せばいいわけですから、「背に腹はかえられない」という人が将来出るかも知れません。

 もっとも、ブラックリストにのって、クレジットカードも作れません。
 ただ、お金に困ったからといって、他人のお金に手をつけたのでは除名を含め、重い懲戒処分が待っていますから「ベスト」ではなくても「ベター」な選択かも知れません。


 ちなみに、私個人は、弁護士の「個人民事再生」という話は聞いたことがありませんし、現実化はしていません。
 ベテラン・中堅には、大きな借金を抱えている方は多いですが、住宅ローンを除いて5000万円までという「しばり」があるから利用はできません。

 ただ、弁護士登録直後なら「支払い困難な借財ができるに至った合理的な理由」があると思います。金銭に「だらしない」わけではありませんから。原則として、法科大学院学院を終了しなければ弁護士になれない、司法修習生になっても給与はもらえないとの制度自体が悪いということになります。
 もっとも、破産するのではないから、理由は何でいいということになりますが、約束を守れない正当な理由を考えた方が精神衛生上は良いでしょう。「自分は悪くない。制度が悪い」。

 将来は、弁護士になるにも「親の財力勝負」になりますね。
 あまり健全ではありません。

TOPへ戻る