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司法 バックナンバー 3/3

司法修習生の給与廃止

 私は、以前のコラムで以下のとおり書いています。

「 現在の司法修習生の給与は、基本給が月額20万2200円(平成19年4月1日現在)となっています。このほか、一般職の国家公務員と同様、扶養手当、大都市調整手当、住居手当、通勤手当、期末手当・勤勉手当(ボーナス)、寒冷地手当などが支給されるのは、当時も同じでした」

 平成22年11月から、司法修習生に給与を支給する給与支給制に代えて、修習資金を貸与する貸与制度が導入されます(平成16年12月10日法律第163号)。

 従来の司法試験での受験生、つまり、旧司法試験合格者対象の司法修習は、第52期(平成10年4月修習開始)まで2年でした。第53期(平成11年4月修習開始)から第59期(平成17年4月修習開始)まで 1年6か月、第60期(平成18年4月修習開始)から1年4か月となっています。

 これに法科大学院卒業者の受験生、つまり、新司法試験合格者対象の司法修習は、新60期(平成18年11月修習開始)から1年です。

 従来の司法試験合格組は、旧60期=平成18年4月修習開始、旧61期=平成19年4月修習開始、旧62期=平成20年4月修習開始、旧63期=平成21年4月修習開始、旧64期=平成22年4月修習開始までで支給です。
 つまり、旧64期=平成23年4月修習開始から貸与となり、返還しなければなりません。

 法科大学院卒は、新60期=平成18年11月修習開始、新61期=平成19年11月修習開始、新62期=平成20年11月修習開始、新63期=平成21年11月修習開始までは支給です。
 つまり、新64期=平成22年11月修習開始から貸与となり、返還しなければなりません。

 また、案段階ですが、具体的内容の案が発表されました。
 (1) 資金の貸与は国(最高裁判所)が、貸与を希望する司法修習生に対し、その申請により貸与します。その期間は修習のため通常必要な期間中、一定額を毎月貸与します。
 (2) 貸与の条件は、資力要件は設けず、無利息で貸与(返還期限を経過した場合は延滞利息を付すしますし、「保証人を立てる」必要があります。
 (3) 貸与額は、修習生が生活の基盤を確保して修習に専念できる程度の額とされており、数段階の貸与額(月額)が設定されており、修習生が選択する額を貸与することとなります。具体的には、a 18万円程度、b 23万円程度(a、bの貸与額は、特段の要件なく選択可)、c 25.5万円程度(扶養家族あり又は住居貸借の場合に選択可)、d 28万円程度(扶養家族ありかつ住居貸借の場合に選択可)(a、bは要件審査の上で貸与)となっています。
 (4) 貸与の終了事由としては、非貸与者が貸与を辞退した場合、修習生を罷免された場合又は死亡した場合等です。
 (5) 返還期間・方法等は、修習終了後数年間は返還を据え置き、その後、10年間の年賦により返還する。繰上返還を認める。正当な理由なく返還期限を経過した場合には延滞利息を付す。返還を遅滞した場合には、期限の利益を喪失し、残額を一括返還するものとなっています。
 (6) 返還の猶予・免除については、被貸与者が災害、傷病その他やむを得ない理由により返還が困難となった場合は、返還の期限を猶予し、被貸与者が死亡又は精神若しくは身体の障害により返還できなくなった場合は、全部又は一部の返還を免除することができるとなっています。

 当然ながらボーナスなしです。
 最大448万円ですね。旧試験合格者で28万円満額。

 お金があれば、借りる必要はありません。もっとも、無利子ですから、借りたお金を郵便貯金や国債で運用すれば、わずかですが、利益が得られます。

 裁判官になったから、検察官になったから免除、弁護士になったから返済というわけではなさそうです。裁判官、検察官任官者からは不満は出るでしょうね。この点は明確にされていませんが、どうなんでしょう。

 支給制の時は、国家公務員共済加入で、健康保険と年金分は天引きでした。従前は、弁護士になった人も、わずかですが、年金はもらえます。

 貸与制になると、国民年金、国民健康保険ですね。
 国民年金は、学生と同様、希望すれば免除になるでしょうね。
 国民健康保険は自分か親の負担でしょう。


 しかし、法曹スタートの時点で、448万円という借金を背負うというのは大変ですね。
 弁護士会の登録に50万円程度いるでしょうし、弁護士会費が年間50万円程度必要です。

 世知辛い世の中になったものです。
 ただ「弁護士になる修習生の生活費まで国費でみるのはいかがなものか」という議論は、私の当時からありました。当時の国家公務員上級職甲種の3年目の基本給でしたし。

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