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司法 バックナンバー 3/3

「軒弁」「即独」

私は、ホームページ公開(平成19年6月1日)の際の、雑記帳の最初のコラムとして「弁護士大増員時代」というタイトルで以下の文章を書いています。

「 まず、弁護士は『資格を得たからすぐ開業』というわけではなく、他の弁護士に雇ってもらう『イソ弁』(居候弁護士)になるのが普通でした。
 給料をもらい、事務所の仕事をしながら、自分の顧客も開拓し、数年後に、独立、あるいは、共同経営者(パートナー)となるというプロセスを経て一人前になっていたのです。
 ところが、弁護士がふえすぎたため、平成19年には『イソ弁』になれない、つまり就職ができない人が400人程度でて、いきなり独立せざるをえない、あるいは、給料をもらわず、他の弁護士の軒先(机)を借りるだけの『軒弁』が生じるという事態が生じるようです 」

 司法試験合格者大増員により、事態は、より急激に悪化しているようです。

 「イソ弁」になれない弁護士が増え、「軒弁」(無給で他の弁護士の事務所で執務させてもらう弁護士。それでも、通常、事務所賃料・電話代・光熱費の負担はなし)は、まだ、ましな方。
 「即独」といって、「軒弁」にもなれない人が、自宅、あるいは、単独か共同で小さな事務所を借りて事務員をおかず、「弁護士資格取得」「即時」「独立」というパターンの弁護士が増えてきたそうです。

 さらに、登録時の弁護士会費40万円(大阪弁護士会の場合)、月々4万4000円の弁護士会費(大阪弁護士会の場合。登録直後は一部減額)を支払う金銭的余裕がないため、弁護士登録を見送り、さらに就職活動をしたり、あきらめて他の職業についたりする司法試験合格者がでてきたそうです。

 弁護士に縁のない一般の人には関係のない話と思われるかも知れません。

 ただ、普通に生活している人でも、重大な交通事故の被害者になったり、通り魔に襲われたりすることは、ありうることです。その場合、弁護士に依頼することもあり得ます。

 一番いい、弁護士の探し方は、信頼できる顔の広い知人、友人に弁護士を紹介してもらうことです。
 会社勤めの人なら、会社の顧問弁護士に相談してみるのも選択肢にはいるでしょう。ただ、会社に知られてもいい交通事故や遺産相続の話なら問題はないでしょうが、債務整理や離婚となると、顧問弁護士は頼みにくいでしょう。

 紹介してくれる人がなければ、弁護士会や地方自治体の法律相談をして、これはと思う弁護士さんであれば依頼すればいいでしょうし、弁護士会(どこの弁護士会でもいいのですが、勤務先に近い方が便利です)に紹介をしてもらうというか、あるいは、ホームページなどで探すことになります。

 紹介者がなく、弁護士に事件を依頼しようとする場合、「軒弁」や「即独」など、「経験もなく、気軽に聞ける先輩もない」「確率の高い」弁護士に依頼しない簡単な方法をお教えします。

 「軒弁」や「即独」が出現したのは、大阪など一般に平成18年登録以降、登録番号なら3万2000番代からといわれています。
 東京の場合、もう少し早いといわれています。
 日本弁護士連合会も、大阪弁護士会など各単位弁護士会も、ホームページ上で、弁護士の情報開示はしています。大阪弁護士会のホームページなら登録年が、日本弁護士連合会のホームページなら、登録番号が明記されています。

 なお、若く見える方に「失礼ですが、弁護士さんになられて何年目ですか」と聞くのは無礼ではありません。
 私は、裁判官を10年していましたので、34歳で弁護士になっていますが、それでも、経験年数を結構聞かれた経験があります。

 若く見える方で、平成18年登録以後の場合、経験年数、それと、端的に「イソ弁」かどうか直接聞けばよいのです。
 答えてくれない、あるいは、「イソ弁」ではないと答えた場合には、どちらかというと、依頼は避ける方が賢明です。
 若くて「イソ弁」であっても、「イソ弁」なら、「ボス弁」に適宜指導を受けることができますし、ボス弁も、自分が雇用している弁護士が問題を起こしては大変だという意識があり、事務所事件だけではなく、イソ弁の個人事件についても、ある程度把握していますから、依頼することに問題ないかと思います。
 もちろん、優秀であっても、何らかの理由で「イソ弁」になれなかった、あるいは、なる必要もなかった弁護士がいる可能性がないかも知れませんが、弁護士はいくらでもいるのですから、あえて、積極的に「軒弁」「即独」を選ぶ理由はありません。
 20代、30代の弁護士は「若すぎる」といって敬遠する人も結構いますから、「もう少し経験を積んでいる弁護士さんに依頼したい」と婉曲に断ればすむことです。

 弁護士会によっては、「即独支援体制」をとるようですから、「即独」の弁護士に、多くの「法律相談」や「弁護士紹介」や「国選弁護」を割当ててくる可能性も否定できません。
 仕事がないのですから、せめて「そのくらいのこと」という考えるかも知れません。弁護士仲間には「優しい」ですが、利用者にとっては「優しく」ありません。

 残念ながら、国選弁護の場合は弁護士を選択できません。これは「運命」としてあきらめるしかありません。
 しかし、民事関係の「法律相談」なら、その弁護士さんに頼む必要はなく、弁護士会で弁護士を紹介してもらえればいいわけですし、「弁護士紹介」を受けた弁護士さんが気に入らなければ、あと2回まで弁護士を紹介してもらえます。

 君子危うきに近寄らずという「ことわざ」もあります。

 

平成21年2月7日追記

 司法修習生(新61期)1811人(前回の試験不合格者を含みます)のうち101人が不合格。
 新61期の修習生で2回試験合格後も、弁護士登録をしていない人は、合格後1ヶ月を経過しても66名。弁護士登録時の弁護士会費40万円、月々4万4000円の弁護士会費すら支払えない人ということになります。
 また、新61期の修習生で2回試験合格後、即独(即時独立された弁護士)は最低17名だそうです。
 「イソ弁」か「軒弁」かは外部からではわかりませんから、統計の取りようがありません。内部で、ちゃんとした給料をもらっているかどうかの違いですから。ただ「軒弁」が、相当数いるということは間違いないでしょう。

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