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司法 バックナンバー 3/3

司法試験予備試験

 私が受験した司法試験は、現在では「旧」司法試験と呼ばれるようになってしまいました。
 司法試験は、学歴、年齢、学歴、性別、国籍、経済力などの差別は一切なし、実力のあるものは合格するという公平なものでした。
 司法試験に合格すれば司法修習生として給料をもらえ、2年間の修習をし、2回試験に合格すれば、裁判官、検察官、弁護士になれました。
 「旧」司法試験の合格者の推移は以下のとおりです。
法科大学院制度の導入で、平成18年度から減少しています。

  平成元年   523
  平成2年    506
  平成3年    616
  平成4年    634
  平成5年    759
  平成6年    759
  平成7年    753
  平成8年    768
  平成9年    763
  平成10年   854
  平成11年 1,038
  平成12年 1,026
  平成13年 1,024
  平成14年 1,244
  平成15年 1,201
  平成16年 1,536
  平成17年 1,454
  平成18年   542
  平成19年   250
  平成20年   141
  平成21年   100程度
  平成22年   100よりさらに減少
  平成23年   新規0(前年度論文合格者救済目的)

 平成22年度に「旧」司法試験の新規受験者がいなくなります。
 なお、平成23年度は、平成22年度に論文式試験に合格しながら、口述試験に合格できなかった受験者に対し、もう一度、無条件に口述試験の合格資格を与えるという旧制度の仕組みを踏襲した試験です。
 私が受験した年は、口述試験不合格者は、501人中のたった10名くらいだった記憶がありますが、今は不合格者が多いのでしょうか。

 これ以降は、原則として、法科大学院卒業者のみに、「新」司法試験の合格資格が与えられます。
 ただ、司法試験は、学歴、年齢、学歴、性別、国籍、経済力などの差別は一切なし、実力のあるものは合格するという「旧」司法試験の趣旨を残すため、「予備試験」という制度が平成23年度から導入されます。

 司法試験委員会から発表された、司法試験予備試験の実施方針(案)骨子の抜粋は以下の通りです。

(1) 実施に当たって一般的に配慮すべき事項として、以下のとおりとされています。
  ①法科大学院終了程度の能力を適切に判定することにより、法科大学院を中核とする新たな法曹養成制度の理念を損ねることのないようにする必要がある
  ②予備試験が、法科大学院に行くことができない人も法曹資格を取得する途を確保するために設けられた趣旨から、それらの人にも、公平に新司法試験の受験資格が与えられるよう配慮する必要がある
  ③予備試験は、新司法試験を受験する資格を与える試験であることから、新司法試験との関係に留意する必要がある

(2) 試験科目は、短答式が憲法・行政法、民法・商法・民事訴訟法、刑法・刑事訴訟法、一般教養で、各科目10~15題程度出題されます。
 論文式は、短答式の科目に法律実務基礎科目が付加されます。この科目は法科大学院における法律実務基礎科目の教育目的や内容を踏まえつつ、民事訴訟実務、刑事訴訟実務及び法曹倫理に関する基礎的素養が身についているかどうかを試す出題となります。出題数は、各科目1題程度です。
 口述式は民事および刑事に分けて実施されます。

  行政法が入っているのが特徴的ですね。国家公務員上級職試験とのダブル受験者に配慮を示したものでしょうか。


 ただ、予備試験の合格者の大半が、2年間の法科大学院通学による時間の無駄、費用の無駄を考えて、能力に自信のある大学4年生により占められると思われます。
 そして、法曹の道を選択する人は、2年間の法科大学院組より2年早く、裁判官、検察官、弁護士になるでしょう。
 また、学者志望、上級職国家公務員試験志望の大学4年生が受験し、単なる「勲章」となり、合格しても司法修習生にならない人も増えるでしょう。

 昔は、22歳で修習生になり、2年間の修習をし、2回試験に合格すれば、24歳で裁判官、検察官、弁護士になっていたのが、22歳で修習生になり、1年間の修習をし、2回試験に合格すれば、23歳で裁判官、検察官、弁護士になれます。
 2年間の法科大学院通学による時間の無駄、費用の無駄を考え、優秀な学生は、早く裁判官、検察官、弁護士になりたがります。

 私は、以前のコラム「年齢と進路」 に「24歳で裁判官になった人と、30歳で裁判官になった人との収入差は、一見、最初の6年の3000万円程度の差のように見えますが、実際は、最後の6年の1億数千万円の差が生涯賃金の差になります」と記載しています。


 予備試験の趣旨である「経済的理由など諸般の事由で、法科大学院に入学できない方でも、法曹界への道を残すという見地」というお題目は立派ですが、結局、優秀な大学4年生のショートカットを何人まで認めるかという問題になりそうです。

 もちろん、法科大学院を出て、「新」司法試験に3回不合格となり「3振アウト」になった人が、予備試験に合格することにより「新」司法試験の受験資格をえ、「新」司法試験に合格すれば修習生になれますが、「3振アウト」の法科大学院修了者が、予備試験の段階で、優秀な大学4年生に太刀打ちできるはずはありません。

 司法試験合格者500名時代でも、大学4年生で20人程度は合格していました。予備試験になって、ショートカットの実力のある人は500人と仮定しても20人です。
 現在は、合格者2300人ですから、少なくとも50人程度は、東京大学、京都大学など4年の人が、悠々ショートカットして、「新」司法試験にほぼ全員合格するでしょう。
 何人が、法曹の道へ進むかどうかは別として・・・
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