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司法 バックナンバー 3/3

もう一つの福知山線脱線事故

JR福知山線脱線事故から4年がすぎました。
 犠牲になった皆様のご冥福を心よりお祈り申し上げますとともに、身体的・心的後遺障害が残ってしまった方に心からお見舞いを申し上げます。

 ところで、当該事故に乗車していた車掌さん(休職中)が、JR西日本を相手取り、車掌として職場復帰することなどを求める訴訟を提起したそうです。JR西日本は駅の事務業務への配置転換を示しているようです。

 一時は、JR福知山線脱線事故の原因となったとして疑いをかけられていましたが(車非常ブレーキを引く義務があったということですが、車掌に非常ブレーキを引かなければならない義務もありませんし、仮に引いていても事故は回避できませんでした)、当該車掌さんは、神様でもない限り、事故防止ができないということがわかり、もとより「おとがめなし」でした。

 一般乗客やその家族ですらPTSDに苦しんでおられるのですが、当該車掌さんの精神心的苦しみは、想像を絶するものがあったでしょう。

 警察に連れて行かれ、事情聴取を受け、会社からも事情聴取を受けたうえ、解放された後も、5日間ホテルに泊まりながら事情聴取を受けさせられたようです。
 「不眠症・適応障害」と診断され、入院。平成19年3月に退院し、現在も通院を続けているそうです。

 ある意味、生存して身体的損傷を受けなかった乗員・乗客の中では、一番、精神的に辛い立場にあったということが想像できます。
 普通に考えれば、ひどい「労災」にあったようなものです。

 医師が「就労可能な状態に回復している」とした診断書をJR西日本に提出しています。
 これに対し、JR西日本は「疾病が重大な事故に直接遭遇したことに起因しており、乗務中の悪影響が完全に払拭できたとは考えられない」「乗務員としての適性・能力に疑義がある」などとして車掌としての復職を拒否しています。

 「乗務中の悪影響が完全に払拭できたとは考えられない」というのは、ある意味あたっているかも知れません。ただ「乗務員としての適性・能力に疑義がある」という点については、他の、どんな車掌が乗車していても、車掌の力で事故は防げませんから、他の乗務員に比べ「乗務員としての適性・能力に疑義がある」とはいえないでしょう。

 JR西日本は、ある意味、労災にあって苦しんでいる車掌さんに対して、車掌職で待遇するかは別として、十分な補償と、仮に事務職とするなら、十分な収入のともなうポストにつけて待遇をすべきであったように思うのですが、いかがでしょうか。

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