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司法 バックナンバー 3/3

公証官としての書記官

昨年のことですが、京都家庭裁判所書記官が、有印私文書偽造・同公私・詐欺罪により起訴されました。
 それまでも、書記官や事務官が、訴訟記録に編綴されている切手を横領したという事件がありましたが、桁違いです。

 裁判官は書記官よりえらいのだから、有印私文書偽造・同公私・詐欺などで私腹を肥やそううと思えばもっと悪いことができる、ただ、やらないだけの話と思われている方おられませんか。
  理屈では、収賄もありえそうですが、せいぜいゴルフ・クラブくらいで、私腹を肥やすどころのさわぎではありません。

 裁判官が私腹を肥やすような収賄をすることは「やらない」のではなく「できない」のです。非違行為は、このところの刑事畑の裁判官の少女買春とかストーカーとか強制わいせつとかばかりですね。

 裁判官の基本的職務は「判断」です。「判決」「決定」「命令」「審判」など裁判書を作成することが基本的職務です。
 司法行政の最重要事項は裁判官会議で決められますから、司法行政という意味でも重責を担っています。

 これに対し、書記官の職務の基本は「公証」です。
 裁判の記録や調書などの書類の作成ができるのは書記官だけです。
 なお、裁判官が書いて、署名(記名)・押印した「判決」「決定」「命令」「審判」など裁判の原本は、記録の中に綴られますから、外部の人は見ることはないでしょう。
 外部の人が見ることができ、裁判が執行される基礎となるのは、裁判書のコピーです。
 「正本」は、強制執行などに用いられるためのコピーで、書記官が作成し、「原本」と同一の効力を有します。
 「謄本」は、文書全部のコピーで、書記官が作成します。
 「抄本」は、文書の一部のコピーで、書記官が作成します。


 もちろん、裁判官は書記官よりえらいことは間違いありません。今年なりたての判事補(特別職)の方が、地方裁判所事務局長(一般職)より序列的に見れば上です。
 また、書記官の勤務評定は、裁判官(特例判事補含む)と当該書記官の上司である書記官がしますから、その意味でも、裁判官の方が地位が上であることはありません。

 「判決偽造」「審判偽造」は書記官がした犯罪です。
 外部の人が見ることができ、裁判が執行される基礎となるのは、裁判書のコピーにすぎません。裁判書の原本が裁判所外に出ることはありません(記録が、例えば和歌山地方裁判所から大阪高等裁判所に移動するときなどは別です)。

 書記官は、悪事をしようと思えば、判決や審判の「原本」を偽造をする必要はありません。
 極端な話、記録など不要です。事件が実在する必要もありません。
 判決や審判などの「正本」を偽造すればよいのです。裁判が執行される基礎となるのは、しょせんは「正本」という名のコピーですから。偽造コピーに書記官印を押せば一丁上がりです。

 裁判官は重要な一部のことだけしかやらず、他は、書記官や事務官の仕事ということが理由です。
 なお、ニュースバリューが低いため、マスコミの扱いは大きくないですから目立ちませんが、書記官の「破廉恥犯」は、数が多いだけに、当然裁判官より多いです。

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