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司法 バックナンバー 3/3

法曹人口3000人問題

「法曹人口3000人問題」という言葉をご存じでしょうか。

 「平成22年までに司法試験合格者を3000人程度にまで増やす」ことの是非の問題です。
 翌平成22年は無理でしょう。ただ、かつては、真剣に議論されたことがあります。

 平成12年の司法制度改革審議会集中討議の席上、「フランス並みの法曹人口(5万人)を目指す。年3000人として2018年になる。年3000人合格とすべきだ」という提案がなされ、「年3000人の合格者でおおむね一致」となり、当時の日弁連会長が、「日弁連として年3000人を受け入れることは可能」との見通しを表明、同年の日弁連臨時総会で、3000人を事実上受け入れる決議を採択したようです。
 もっとも、フランスの5万人の「弁護士」は、その昔、「弁護士」と「司法書士」を同じ資格にくっつけ、その結果生まれた「弁護士」の数です。つまり弁護士+司法書士の合計数です。

 日本では、長い間、司法試験合格者が500人程度におさえられ、そのうち400人ほどが弁護士になっていました。
 基本的に、司法試験は、択一、論文、口述の3段階に分かれていて、私の記憶に間違いがなければ、受験者は2万8000人程度、口述合格が2300人程度、論文合格者が500人程度、論文合格者は、よほど、話すのが苦手な人しか落ちませんから、口述試験合格者も500人程度となります。

 平成7年までに弁護士になった人、つまり、司法修習47期までは、500人の「難関」をクリアしています。
 それまでに合格した弁護士さんは「1年500人があたりまえ」「それ以上は水増し」と、心のどこかに先入観念がある方が多いと思われます。
 特に、司法試験受験浪人を何年もした人は「弁護士に簡単になれる」のは「おかしい」という心情があるようです。
 平成18年に終了修習し裁判官・検察官・弁護士になった(厳密には「なる資格」を得た)人が1500人、平成19年に2100人程度と増え、平成20年に2200人程度になりました。
 ということは、その昔、何年間も択一式試験に合格しながら(2300人以内に入りながら)、論文式試験に何回も(1年1回の試験ですから「何年も」)合格せず、やっと弁護士になってみたら、択一試験に合格するレベル(足切りレベル)で最終合格するようになったことをみて「自分の今までの努力は何だったのか」「論文試験に合格するまでに無駄に費やした青春の何年間は何だったのか」と思う人がいても不思議ではありません。

 「平成22年までに司法試験合格者を3000人程度にまで増やす」という予定の実現性は乏しくなりましたが、前の年より次の年の合格者数が減るということは考えにくいので、毎年、少なく見積もっても、昔の短答式試験合格者数2300人程度は増え続けるでしょう。

 また平成21年7月26日「政府は、昨年は2000人余だった司法試験の合格者を、10年には3000人に増やす方針だ。都市部に集中する弁護士の偏在解消などのため、この増員計画は堅持していかねばならない」と報道されていますが、「現」政府のことでしょうか。

 昔は「田舎に行けばベンツに乗れるし、ビルも建つ」と言われたものですが、法曹人口の絶対数が少なかったときの話で、もはや、1弁護士あたりの需要が著しく低下しているでしょう。
 需要がなく、採算があわないので、ひまわり基金法律事務所(弁護士会からの資金援助)、また、採算度外視の法テラス法律事務所を設立する他ないということでしょうね。
 弁護士が行きたがらないから地方の弁護士が増えないのではなく、地方に需要がないから、地方の弁護士が増えないということですから、弁護士をいくら増やしても無駄でしょう。

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