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医療のバックナンバー

5年生存率

癌が治癒したかどうかを判定する基準として、5年生存率(「5生率」ともいわれます)が用いられます。

 診断から5年経過後に生存している患者の比率を示します。
 これは多くの癌で、治療開始から5年間で癌が再発しなければがなければ、癌は治癒したと一応考えられているためです
 成長の遅い癌、例えば乳ガンなどでは、5年再発しなければ、治癒したということまではいえません。

 なお、厳密にいうと「診断」時から5年ですから「摘出手術の時点」ではありませんが、ほぼ同時と考えていいでしょう。
 また、死因は問いませんから、例えば「交通事故で死亡」も「死亡例」に入りますが、数的には無視していいほどでしょう。
 さらに、癌が「再発」していても、死亡していなければ生存例にカウントされます。

 いずれにせよ「目安」ですから、目くじらを立てるほどのことはありません。


 癌再発のメカニズムはどうなのでしょうか。

 癌ができた元の部位(臓器など)を「原発巣」といいます。
 癌細胞が原発巣だけに留まっているのであれば、たとえ発達した癌であっても外科手術で完全に切り取れば癌を治すことができます。
 しかし、癌細胞は原発巣から離れた所へ「飛んで」いって、別の場所にも癌細胞の塊を形成する性質を持っています。癌の「転移」といわれます。

 医師が「癌が飛んで」と説明を受けた患者さんが、空中を癌細胞が飛んでいる姿を想像して不思議な顔をすることもあるようです。医師も、医師どおしならともかく、患者さんには「転移して」と説明されるようになっているようです。

 臓器には、栄養物や老廃物を運搬するためにリンパ液と血液が流れており、癌細胞はこのリンパ液や血液の流れに乗って、リンパ節や肝臓や肺などの臓器に運ばれ、新たな癌組織(「転移巣」といいます)を形成します。

 癌細胞が、臓器などに、どの程度浸潤しているか、リンパ節に転移しているかどうか、腹膜や他臓器に転移しているかによって、癌の進行程度(ステージ)が判断されます。
 昔は、癌の進行程度は、ⅠからⅣまで、その中でa、bと細分類されることもあります。昔は、大腸癌についてⅤがありましたが、紛らわしいので統合されています。

 癌の外科手術後の再発というのは、癌組織を切除した部位に取残しがあった場合と、すでに癌が他の臓器に転移していた場合に起こります。
 癌がどこかに残った場合、次第に増殖して多くは5年以内にそのほとんどが発症してしまいます。
 そして、治療の効果を比べるために5年生存率が用いられ、診断・治療時から5年経過して再発が確認できなければ、「癌は手術して5年経てば治った」と一応考えられます。
 これは、手術後5年後以降に再発することは稀であるという経験則からです。

 ただ、手術の後に補助療法(抗癌剤や放射線による治療)により、再発や転移があっても5年以上生き延びることも珍しくありませんし、増殖の遅い癌では10年以上してから再発するものもありますから「目安」ということになります。

 5年生存率は、癌の進行程度(ステージ)に大きく依存します。
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