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外国事情 バックナンバー2/2

ケーブルカー

急な坂道をのぼる列車(多くは「登山電車」)には、いろいろな駆動方法があります。

 まず、典型的なのはアプト式(Abt system)と呼ばれるものでしょう。
 ラック式鉄道のうち「アプト式」(「アブト式」と呼ばれることもありますが、発案者であるドイツ系「Abt」の英語読みです)とは、2枚または3枚のラックレール(Rack-rail)およびピニオン・ギア(Pinion-gear)を位置をずらして設置する方式を指します。
 2本のレールの間に、ギアの受手となるギザギザのレールのある登山電車です。
 常に、ピニオン・ギアがかみみ合っていることにより、安全性の向上が図られています。

 日本では、この方式によるラック式鉄道しか存在しなかったため、ラック式鉄道そのものを「アプト式」と誤解している方もおられます。ラック式鉄道には、アプト式の他にマーシュ、リッゲンバッハ、シュトループ、ロヒャー、フォンロールの各方式があり現存しています。

 日本では、信越本線の碓氷峠、道井川線などがあり、スイスの氷河急行で有名なマッターホルン・ゴッタルド鉄道や蒸気機関車で有名なブリエンツ・ロートホルン鉄道などがあります。ユングフラウ鉄道もそうですね。


 これに対して、ケーブルカーがあります。
 世界的にいえば、ロープウェイやゴンドラリフトなどの「普通索道」もケーブルカーの一種ですが、日本では「鋼索鉄道」だけをケーブルカーと称することが一般的です。

 日本のケーブルカーは、例外なく「交走式」で、鋼索の両端に車両を繋ぎ、井戸の「つるべ」のように一方の車両を引き上げると、もう一方の車両が降りてくる方式です。
 双方列車ということもあれば、片方をカウンターウェイト(ダミーの重り)にして1両で運行しているものもあります。
 ちなみに、百万ドルの夜景を見に行く香港のピークトラム(Peak Tram)も「交走式」のケーブルカーです。
 また、ベスビオ火山に行く登山鉄道(フニクリ・フニクラ)も「交走式」です。

 これに対し、「循環式」のケーブルカーもあります。
サンフランシスコのケーブルカーに見られるような、軌道下で常に動いているケーブルを車両が掴んだり放したりすることで動くシステムです。
 観光客が、中に残席があるにもかかわらず、車外ににつかまって「はしゃいている」ケーブルカーですね。


 ちなみに、ケーブルカーに乗務員が前方にいることがありますが、「運転士」ではありません。
 実際には「車掌」が前方確認のために前方に乗務していて、「運転士」は山上側の駅にある運転室に詰めていて巻上機を操作しています。ケーブルカーに乗っている「車掌」は非常時にブレーキをかけるだけです。

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