金融・経済 バックナンバー
金融商品取引法と投資信託
平成19年9月24日付日本経済新聞に、某証券会社の投資信託の全面広告が掲載されています。
いくら銀行や郵便局で販売されているからといって、投資信託を購入しようとする人は、投資信託が元本割れするリスクのある商品であることは通常知っているでしょう。
証券や債権は日々価格変動するものですし、債権は外国国債を含めデフォルトの可能性があり、さらに、外国の証券・債券に投資する投資信託は、為替変動によるリスクもあります。
案外知られていない点は手数料です。
金融商品取引法によれば、信託報酬・手数料の価格・上限・計算方法が明記されなければならず、特に投資信託に関しての手数料等の表示はわかりやすいものが求められます。
ということで、当該全面広告に掲載されていた例で考えてみます。
便宜、手数料を上限にて計算します。また、私は投資信託を購入した経験はありませんし、事件として扱ったこともないので、細部にミスがあるかもしれません。本ホームページは「レス」をつけられないようにしてあり、また、Eメールアドレスは表記していませんので、ミスがあれば、電話かファクシミリにてご指摘いただければと思います。
申込手数料は3.15%です。
信託報酬は1.89%です。
申込時に、申込手数料3.15%が引かれて、財産が96.85%に減ってしまいます。
96.85%になった財産が、増加するのか減少するのかわかりませんが、1年後に、信託報酬1.89%が引かれた98.11%になってしまいます。
上記の条件で、エクセルにデータを入れ、運用実績ごとにシミュレーションしてみました。
100万円投資したとして、全く利益も損失もない場合には、3年後に91万4617円に減ってしまいます。
5%の利益をコンスタントにたたき出したとしても、3年後に96万0348円に減ってしまいます。
10%の利益をコンスタントにたたき出したとして、3年後に100万6079円と現状維持です。
逆に、5%の損失をコンスタントに出しているとすれば、3年後に86万8887円に減ってしまいます。
10%の損失をコンスタントに出しているとすれば、3年後に82万3156円と激減します。
何に投資するのかは知りませんが、10%の利益をコンスタントにたたき出すのは難しいと思います。
よほどの幸運に恵まれない限り、結局は、販売した証券会社、運用を委託されている機関の「一人勝ち」でしょう。
そして、何も知らない人は、手数料で元金が減っていることも知らずに、リスク要因のために元本割れしたと思いこんでくれ、矛先は販売をした銀行などに向かないでしょう。
「投資信託に関しての手数料等の表示はわかりやすい」ものになっているとは思えません。プラスマイナス0と仮定したときの元金の変化が必要ではないでしょうか。
こうしてみれば、銀行が、定期預金をしにいっているのに、しつこく投資信託を勧める理由がわかるかと思います。