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金融・経済 バックナンバー

1人あたりのGDP

 大田経済財政担当大臣が、平成20年1月18日、衆参両院の本会議の演説で、「世界の総所得に占める日本の割合が24年ぶりに10%を割り込んだ」「もはや日本は『経済は一流』と呼ばれる状況ではなくなった」と演説したそうです。

 また、新年早々の速報値では、日本のOECD諸国の1人あたりのGDPの米ドル換算が、2007年に18位になったそうです。
 速報値ではないですが、便宜、変遷をあげます。
 なお、2007年にドイツやフランスに抜かれたため、順位が下がったということでした。

OECD諸国の1人あたりのGDP(米ドル)
   1992      2002   2005
1 JP 35,008  LU 62,222   LU79,565
2 CH 34,698 NO 48,624   NO 63,961
3 LU 34,697 CH 44,647   IS 55,517
4 NO 27,147 DK 39,611   CH 50,469
5 DK 27,101 IE 39,102   IE 48,289
6 US 25,374 US 37,277   DK 47,716
7 DE 24,691 IS 37,241   US 41,574
8 AT 23,983 SE 33,902   SE 39,535
9 SE 22,944 NL 33,331   NL 38,577
10 IS 22,786 JP 33,321   UK 37,310
11 NL 22,112 FI 31,552   FI 37,276
12 BE 21,993 AT 31,325   AT 37,216
13 FR 21,897 UK 30,580   AU 35,592
14 CA 19,340 FR 29,993   JP 35,650
15 AU 17,609 BE 29,855   BE 35,585
16 IT 17,413 DE 29,541   FR 35,150
17 FI 17,229 AU 27,623   CA 35,073
18 UK 16,675 CA 27,374   DE 33,703
19 IE 16,675 IT 26,602   IT 30,341
20 ES 12,986 ES 20,959   NZ 27,146

参考・国コード(2レター)
スイスCH、ルクセンブルグLU、ノルウェーNO、デンマークDK
ドイツDE、オーストリアAT、スエーデンSE、アイスランドIS
オランダNL、ベルギーBE、オーストラリアAU、フィンランドFI、
アイルランドIE、スペインES、アメリカUS、フランスFR、
カナダCA、イタリアIT、イギリスUK、ニュージーランドNZ

 また、主要国の国コードは、アメリカ・カナダ(国コード不要)を除き、インターネットのURLの最後についている2文字とほぼ同様ですから、覚えておかれれば、URLの最後を見れば、どの国のホームページかわかり便利です。


 確かに、日本は1992年に1位でしたが、所得は不変ながら、順位を落としています。

 これをもって、日本が「貧しくなった」という悲観的論調が目立ちます。

 確かに、日本の経済的成長率は1992年(平成4年)以来低いです。バブルが崩壊した後の話ですから。
 もっとも、消費者物価もほとんど上がっていません。

 私は、経済については素人ですが、必要以上に悲観的になる必要はないと思います。

1 まず、収入だけを見ていては不十分で、物価の上昇も見なくてはなりません。
  日本を除く他の国は、確かに名目的に所得は上がっていますが、インフレで物価も上がっていますから、生活が、名目的な所得ほど、生活水準が向上したということはないと思います。
 日本は、1992年(平成4年)以来、所得も上がっていませんが、物価も上がっていませんから、生活水準が下がったということはありません。

2 為替レートのトリックが考慮されていません。
  1人あたりのGDPは米ドル換算された統計です。
  すなわち、日本円は、他の通貨に比して、相対的に円安で推移しています。
  海外旅行をよくする人なら、だんだん、為替レートが悪くなっているため、海外旅行の「うまみ」が消えていることは実感でわかると思います。特に、かつては、アメリカ・米ドル使用国(グァム、サイパンなどです)を旅行していると「物価が高いなぁ」と実感はありましたが、それ以外の国、特に昨今のユーロ高で、ユーロ圏の物価は、おしなべて、アメリカより高くなっています。
  生活水準を端的にあらわす「購買力平価」(それぞれの通貨の購買力(商品を購入する力)が等しくなるように計算した各国通貨の交換比率のことです。外国為替市場の為替レートは、貿易などの国際的取引の影響や、投機による変動が多いですが、購買力平価は、そういう影響・変動を取り除き、より経済実態に即した各国比較ができます)は、日本が、円安のため、他のOECD諸国に近づいてきたということです。
  なお、2007年にドイツとフランスに抜かれたのは、ユーロ高が原因です。
  ユーロは、発足当初こそ米ドルより価値がありましたが(1ユーロが1米ドルより高かった)、すぐに、米ドルより低くなり(1ユーロ=0.99くらいが続きました)イラク戦争のころから、ユーロ高が進み、なんと今では1ユーロ=1.46米ドルとなっています。その間に、ヨーロッパ諸国が、アメリカより1.5倍豊かになったということはありません。ほぼ、豊かさは、さほどかわっていないでしょう。

3 17の国が上位といっても、ヨーロッパの小国が目立ちます。
  まともな人口を有する大国は、アメリカくらいでしょうか。もっとも、オーストラリア、カナダは、国土は広いですが、合計しても、日本より人口は少ないです。
  国の数が多いと悲観することもありませんし、ヨーロッパの先進国は、税金・社会保障に収入の相当割合を持って行かれるので、手取りの所得は大きくありません。その分福祉が充実していると言えば充実していますが・・・・

 ただ、長期的にみて、少子高齢化などもあり、資源を持たない日本の経済が、資源を持つ大国、新興国などに比べ相対的に低下するということはやむを得ないでしょう。

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