本文へ移動

金融・経済 バックナンバー

マイナス金利

昨年、ニューヨーク債券市場で、米財務省証券(TB)1ヶ月ものの利回りが0.00%に、3ヶ月物の利回りに至っては一時マイナス圏に落込みました。
 TBは満期までの期間も短く、金利変動などの影響も受けにくいとされています。

 数ある金融商品のなかで、特にリスクが低いとされる米短期国債に資金が集中するのは、米政府の大規模な景気対策が相次ぐなかでも、投資家にリスク回避姿勢が根強いことを示唆しています。
 株価急落などを受けてデフレ傾向が一段と強まりかねないといった懸念が強まったことが原因です。

 常識的に考えれば、金利の下限はゼロですね。
 例えば、仮にマイナス金利があるとすれば、預金者がお金を預けると銀行に金利を「支払」わなければならないということですから。何か、現金の保管料を取られている気がします。

 金利を払ってまで銀行に預ける人がいるのでしょうか。

 借手側から考えると、事業の平均的成長性がおおよそ名目経済成長率(GDP)程度と考えてみましょう。
 そうすると、今の日本はインフレ率が殆どゼロないしはむしろマイナスに近いし、実質経済成長率もゼロに近いマイナスです。つまり、金利の水準はゼロないしはマイナスでもいいという結論になります。

 貸手にとって妥当な金利の水準は、自分でお金を保有するよりも、貸した方が将来受け取る金額が大きいと思える水準ですね。
 もし金利がマイナスだとすれば、無理してお金を貸すよりも、現金で保有した方がいいはずです。そうすれば目減りしません。

 しかし、銀行に預けないとした場合、人はタンス預金を考えるでしょう。

 ただ、タンス預金は安全でしょうか。
 家が火事で焼けてしまった場合を考えてみよう。あるいは、空き巣被害にあうかも知れません。
 人々が現金を持ち歩かなければならなくなると、スリや恐喝、さらには強盗も増えるかも知れません。
 一般的に言って、現金に保険は下りません。
 かといって、銀行の貸金庫は、手数料を結構とられます。

 人々は、マイナス金利になっても、最低限必要な預金を銀行に預け続けるでしょう。
 銀行は「金庫」としての役割、あるいは振込み等の資金決済の役割もあります。

 なお、かつて、「金庫」代わりではなく、本当に、金融立国・スイスで、マイナス金利が導入されたことがあるそうです。
 投機的にスイス・フランが買い進まれたため、スイス・フランを短期的に買い、預金に預ける人々に対し、懲罰的にマイナス金利のペナルティを課し、スイス・フラン高を抑制しようとしたものだそうです。
 スイスは、世界中からの信任が厚く、そのような政策をとっても問題はなかったそうです。


 話は変わりますが、普通預金は預金者のコストが「0」、つまり、管理手数料が無料というのは日本の常識にすぎません。

一般に、米国の銀行は、当座預金や普通預金口座の平均残高が一定金額(2000ドルないし5000ドル等)未満は、逆に、口座維持手数料(minimum charge)を取られます。 ヨーロッパの銀行も、同様の銀行があります。
 
これらの方が合理的ですよね。
 日本人は、預金者のコストが「0」ですから、不要な通帳をつくりまくります。


 ところで、今回の世界的経営危機では、定期預金に預けていた人が圧勝し、ごく一部を除き、株、不動産、あるいは、投資信託などに投資をしていた人が大損をしたことになります。
 「何もしない、何も考えない」人たちが「大勝利」を得たというのは皮肉なことですね。

 NY株ダウ平均が6547ドルになりました。12年ぶりだそうです。
 日経平均も、一時、バブル後最安値の7086円まで下落しました。26年5ヶ月ぶりだそうです。
 どこまで落ち続けるのでしょうか。それとも、大底をうったのでしょうか。
 

TOPへ戻る