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金融・経済 バックナンバー

時価会計の緩和

その昔は、企業の決算時に、所有している株式・社債・不動産などの資産を、「買った時の値段」(取得原価、簿価)で評価していました。
 こうした評価方法によりますと、たとえ資産の価格が大きく変動しても、決算上では儲けも損失も出ていませんでした。

 ですから、バブルが盛んな時などは「あの企業は大きな含み益を抱えている」ことで株式が買われ、株価が高くなる会社がありました。
 他方では「あの企業は膨大な含み損を抱えていて、決算数字が真実を示していない」ということで株価が下がる会社もありました。

 「時価会計」とはこうした資産を時価(決算期末時点に流通市場で付いた価格)で評価し、企業の決算に正確に反映させる方法です。
 投資家に企業の「真の姿」を示そうというわけで、時価評価会計の導入は国際的な流れになり、当然、日本にも導入されました。

 しかし、平成21年4月2日、米財務会計基準審議会(FASB)が、時価会計の適用基準緩和を発表しました。
 具体的には、以下のとおりです。
 これには、米連邦議会議員からの強い圧力があったようです。また、銀行は、「一部の資産は市場が機能していないため売却できないが、資産の価値自体は劣化しておらず、十分なキャッシュフロー(現金収支)を生み出す」などとの主張もなされています。

1 銀行とその監査法人に、非流動的な資産の評価で「大幅な裁量」を持たせることにしました。
 例えば、企業のキャッシュフローが見積もり可能で十分な額である場合、非流動資産の市場価値の見積もりにこのキャッシュフローを用いることができます。
 この方法は、銀行の監査法人が「新たに発行する場合の市場価格が大幅に下落している」と判断した場合、つまり、プライマリー(発行)市場はあったがセカンダリー(流通)市場がなくなってしまった場合に適用できます。
 もちろん、理屈の上からして、セカンダリー(流通)市場がなくなっても、各種統計などから、「時価」が計算できないはずはありません。従前は、その方式ですることができたわけですから。

2 評価損の計上を余儀なくされるような一部の非流動性負債を「その他の包括的利益」に算入できることにしました。
 その結果、金融機関では損益計算書に記載される損失が減り、営業利益が改善されます。
 これらは価値の劣化した非流動性の証券であり、企業が満額を取り戻すことができないと考えています。

 これをきっかけに、金融機関の平成21年(2009年)1月から3月期決算に好影響が出るとの期待が高まりました。

 端的に言えば、今回の経済恐慌で、時価会計を厳格に適用すると、銀行の収益が減少するから、「時価会計」の緩和をして、「ゲタ」をはかせる措置をとったということですね。

 なお、新たな監査指針によって銀行は非流動資産の評価に社内のモデルや分析を用いることができるようになり、最終損益が平均20%押し上げられる可能性があるとの調査結果もあります。
 米シティグループのような大手行は、非流動性の住宅ローン関連証券やその他の証券を大量に保有しているため、資産価値の再評価による利益の恩恵を最も大きく受けることになりました。ただ、それでも不十分であることは、みなさんご存じのとおりです。

 世界規模の恐慌ですからやむを得ないのかも知れませんが、日本の「失われた10年」の要因の1つは「時価会計」と言われています。

 アメリカは、あまりに「ご都合主義すぎる」と考えるのは私だけでしょうか。
 もっとも、アメリカ経済が「こけては」、日本経済も「こけます」から、仕方がないのでしょうね。

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