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金融・経済 バックナンバー

フリンジベネフィット

「フリンジ・ベネフィット」という言葉をご存じでしょうか。

 「フリンジ・ベネフィット」(fringe benefit。追加給付)とは「給与所得者が本来の給与のほかに受ける経済的利益」のことです。
 経営者が経費を負担する「福利厚生」や「現物給与」などが、これに該当します。

 具体的には、社宅、慶弔金の支給、会社の費用負担の社員旅行、通勤手当や日当、制服、結婚祝いなど慶弔金の支給などのことをいいます。

 あくまで、通勤費なども含めて、会社から支給される、給与・賞与を含む有形無形の利益は、形式的には、原則的には課税されるべきものと所得税法に定められています。
 しかし、実質は、現金で支払われる給与・賞与などを除き、さまざまな法令・通達により「社会通念上認められるもの」は「非課税」として取扱われています。

 金銭で支払われるものでも、通勤手当の支給はじめ、社会保険料の半額を会社が負担し、労働保険料の7割程度を会社が負担しているのですが、基本的には課税対象になっていません。
  「法定福利費」や「福利厚生費」などは、あまり考えることなく経費処理されています。
 社会通念上妥当であると認められたフリンジ・ベネフィットは、利益を受ける個人には所得税がかかりませんし、会社にとっても経費となりますので、その分、法人税の負担を軽減することが出来ます。

 一方、本来課税されるべきものであるのに、一定の要件を満たすものについては課税されず、企業など雇用する立場の団体が、給与を増やす代わりに福利厚生を充実させた場合、その分、国としては課税する機会を失うことになります。

 何がフリンジ・ベネフィットなのか、何が非課税なのか 「給与等とされる経済的利益の評価」 により、何が所得として課税され、何が所得として課税さないかがわかります。

 国税庁の通達集を見ればわかりますが、その多くは「社宅」にさかれています。
 やはり、金額が大きいことが原因でしょう。

 社宅に入る利害得失はいろいろあるでしょうが、税務上、また、現実的な利益の享受という点からすると、社宅に入るということは、きわめて大きな非課税の利益を得ることになり、単純に経済的合理性からすれば、入らない手はありません。
 しかし、会社の目上目下の関係を、そのまま、自宅に持ってきていいものでしょうか。
 「それでもいい」という人は社宅に入り続けます。しかし、自宅でゆっくりくつろげない人は、利得を放棄して、別途、自宅を購入したり借りたりします。
 裁判官など、転勤の多い職種の場合は、20年程度たって、任地が、ある程度自宅からの通勤範囲に限られるようになってから自宅購入を検討する方が多いです。

 法律事務所の場合は、基本的には小規模ですから、社宅があったり、福利厚生施設があったりするわけではありません。

 多いのは事務所旅行でしょうか。

 最近では、社員旅行として国内だけでなく海外に行く事務所も増えてきています。
 その際の旅行費用は、次の条件を満たしていれば福利厚生費として処理することができます。

 1 旅行に要する期間が4泊5日以内であること(海外旅行の場合は現地での滞在日数が4泊5日ということで、飛行機の中での1泊は加算されません。)
 2 旅行に参加する従業員の数が50%以上であることること
 基本的には上記の条件を満たしていれば福利厚生費として扱って差支えありませんが、1人当りの費用が10万円を超える場合には給与として扱われる可能性もあります。

 なお、当日不参加の方への現金支給はしてはいけません。
 不参加者への現金支給を行った場合は、不参加者だけでなく、旅行へ参加した人も、その費用は従業員への給与とみなされ、所得税が課せされます。

ちなみに、当事務所も、他の法律事務所と一緒に、秋口に毎年事務所旅行に行っています。
 ソウル(2泊3日)、北京(2泊3日)、台北(2泊3日)、ロタ(2泊3日)、香港・マカオ(3泊4日)など近場ですが、女性陣の要望でホテルを豪華にするため、10万円をこえているかもしれません。

 ごく一部の大法律事務所を除いて、法律事務所は、世間から見ると「小企業」です。
 事務所旅行が最大の 「フリンジ・ベネフィット」でしょうか。

 法律事務所は、あまり景気に左右されません(景気が悪くなれば、破産で収益が上がります)。
 もっとも、弁護士の増加により、収益の悪化、あるいは、割の合わない仕事の受任による労働強化は不可避のようです。

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