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金融・経済 バックナンバー

学資保険

「学資保険」とは何でしょう。

 学資保険とは、親が子どもの教育費を「計画的に貯めること」を目的とした「貯蓄性」のものです。保険契約者は、通常、親であり、被保険者は子です。

 基本契約は、被保険者である子が、15歳の学齢期(中学入学)、18歳の学齢期(高校入学)、22歳の学齢期(大学院進学等)に満期金が受け取れます。
 また、保険契約者である親が死亡すれば、将来の保険料支払いが免除となります。

 なお、さまざまな付加契約がつけられます。
 「子供に万が一の事があった時の死亡保障」「子供が入院したときの医療費の補助」「契約者が死亡したときに育英資金の補助」などです。

 「子供に万が一の事があった時の死亡保障」は葬式代でしょうか。縁起はよくないですね。親より先に死ぬ子は、たとえいくつであっても「最大の親不孝」といわれます。例え、親が100歳をこえていても・・。なお、葬式代なら、子を被保険者とする少額の生命保険で代替可能でしょう。
 「子供が入院したときの医療費の補助」は、ファミリータイプの医療保険で代替できそうですね。
 「契約者が死亡したときに育英資金の補助」は、親の生命保険で代替できそうです。

 貯蓄目的なら貯蓄をしていけばいいですし、保険契約者である親が死亡する場合に備えて、その部分余分に親に生命保険をかけるという方法もあり、他の特約は、上記の代替できる保険があります。

 しかし、そんなことを言っていては身も蓋もありません。

 効果としては、以下のものでしょうか。

1 実質的な天引き預金であり、まして「子供のため」ですから、最優先に支払われ、経済的に困窮し、解約しなければならない場合、数ある保険のうちで最後(親の医療保険で、親が疾病に既にかかっていて、再発する可能性がある場合などは、これが解約されるべき「最後」の保険となります)の保険です。
 つまり、最優先に支払われ、最後に解約される、心理的に「最強」の保険です。

2 親の子に対する愛情表現としても有効です。

 従って、子のある夫婦が円満である限り、最適の保険といえるかも知れません。

 


 しかし、離婚するとなると、これが感情のもつれになり調停が難航することがあります。

 まず、妻(親権をとる配偶者です。夫でもかまいません)が夫に対し「子供がかわいいなら、養育費と別に学資保険を払え」「子に対する愛情はないのか」と「感情的」になることがあります。
 養育費は、家事審判官(裁判官)による審判によって最終的に決着がつくのであり、その基準が明らかになっていますから、 「養育費算定表」 に応じた話合いがなされることがあります。これは、子の学資保険は当然含んでの金額であり、妻の言い分は裁判所では通りません。

 次に、財産分与をするとき、学資保険の解約返戻金は、分与される財産の対象となります。
 妻(親権をとる配偶者です。夫でもかまいません)が、夫に対し「子供がかわいいなら、子供の学資保険を財産分与の対象とすべきでない」「子供はかわいくないのか」と「感情的」になることです。
 親が契約した保険ですから、当然、解約返戻の対象となります。子の固有財産ではなく、夫婦が協力して築いてきた財産です。

 ちなみに、子名義の預貯金については、「子の収入」による財産は希ですから、原則財産分与の対象となります。例外は、子が相続した土地・家屋からの地代・賃料収入とか、子がもらったお年玉を、別建てで預金しているなどの場合です。別建てでなくても、お年玉の金額などがはっきりしていれば、それは、子の固有財産ではあり、夫婦が協力して築いてきた財産ではありませんから財産分与の対象となりません。

 なお、財産分与するにあたって、保険契約を全て解除する必要はなく、機械的に、返戻金を合計して、2分の1にするだけですから、妻(親権をとる配偶者です。夫でもかまいません)が存続を望めば、解約返戻金分を妻が取得したものとして計算して、契約者を妻にかえて存続させることは可能ですし(以後、親権者が、養育費の中から、保険料を支払います)、現実に、そのような例が多いでしょう。


 また、破産するときもやっかいなことがあります。

 ずっと前からの子供名義の預金なら、裁判所も破産に際して、解約して金にして、債権者に配当しろとはいいません。
 学資保険は、保険契約者が親ですから、親が破産するときは、原則として、解約返戻金を差出して配当に回さなければなりません(自由財産拡張が可能なら別です)。
 そして、他の保険は解約しても、学資保険が最後まで残っているという例が結構あります。
 20万円を超えている場合が多いですから(保険といいながら、保険部分はごくわずか、実質は積立預金です)、解約しなければなりません。
 弁護士は、客観的にわかっていますから、着手金を親兄弟から援助を受けるのではなく、学資保険を解約して弁護士費用に充てるのが結局得ということを縷々説明するのですが、なかなか納得してくれません。
 残しても、解約をさせられて配当にあたるのですから、賢明ではないのですが、親兄弟が着手金を出してもらおうとする人がいます。また、返戻金が20万円もあるとは思ってもいなかったと、あとで後悔する人もいます。

 個人民事再生をしていても、本来なら3年、100万円の返済でいいところ、学資保険の解約返戻金が大きすぎたため(子供が2人で、ある程度の年齢になっていたら、解約返戻金が100万円をこえることも珍しくありません)、他の財産を含め、100万円をこえる弁済をさせられることがあります。


 学資保険は、平時には、子に対する思いやりとして「最重要視」されるものでも、戦時には、実質は「保険という名の」「積立預金」にすぎません。
 それで折り合わず、円満な離婚調停が成立しなかったら目も当てられません。
 また、破産や民事再生などで、依頼者と弁護士の「もめごと」になるのも嫌ですね。

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